ヒノエくんと語ろう 1
静かに部屋の隅まで歩み、知盛は座った。
そして、いつもの薄笑いを浮かべ、ヒノエと敦盛を見詰め続ける。
「言いたいことがあるなら、はっきり言って欲しいものだね」
「ほお…、何故、そう…思う?」
「あまり、男にジッと見詰められるのは趣味じゃないんでね」
「女……なら、いいのか?」
「ヒ、ヒノエ、それに中納言殿も…」
「『中納言』……ククク…まったく…鬱陶しい肩書き…だな」
「そのようなお戯れは」
「でも、その肩書きのおかげで結構な余録に与ってたんじゃん?」
「ククク、それは…そうだな…。…美味い酒、綺麗な服、贅を尽くした屋敷…。
肩書きにすり寄る…女どもや、貴族ども…。そして何より雅で不自由な生活……」
「やれやれ、新中納言知盛殿ともあろう御方が、贅沢なこと言うじゃん」
「……贅沢」
「そうだろう、良い暮らししてたんだ、多少の不自由ぐらい我慢して貰いたいね」
「…出来る我慢は…、ふて寝して…過ごしたな…。
ククク、何せ、『蒲柳の質』なもので…」
「『蒲柳の質』にしては、アクティブじゃん」
「…あくてぶ…?」
「アクティブ。活動的ってことさ」
「…ほお。…何故?」
「将臣から聞いてるぜ。あっちの世界で、望美や敦盛達が熊野に来ていた時、
あんたも将臣にくっついて熊野に来てたってこと」
「還内府殿に…、無理矢理連れてこられた…だけだ」
「あれこれ望美を連れ回そうとも、したみたいじゃん」
「逆…だな。…あの女が勝手に…俺達を引っ張り回したのさ。
直接…、聞いてみるが…よかろう」
「それに、あちこちの戦場で、常に先陣きって戦の真っ直中に突っ込んでるじゃん。
以仁王の反乱鎮圧、美濃と近江の叛乱平定、それに瀬戸内は備中水島の戦い…
数え上げたらきりがない」
「血が…見たかっただけ…だな。それにしても…よく…御存知で…。しかし……」
「『しかし』?」
「熊野別当殿は、俺のストーカー……だったのか」
08/04/25 UP
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