母 帰る  











  「弁慶! いい加減良いのではないか?

   こうして同じ部屋で飯を食っているのに、

   話しどころか『目も合わせるな』では息が詰まる!」



  「ダメですよ、九郎。

   こうして知盛殿も我慢していらっしゃるのですから」



  「別に……我慢は…していない……がな」



  「やれやれ、同居人が増えて嬉しいのはわかりますがね。

   九郎の方が半日も持たなかったのは、僕の計算違いでした」



  「弁慶!」







次の朝、九郎は驚く事になる。

それは、九郎の部屋と、弁慶の部屋の間の廊下に白いテープが貼られていたのだった。

そのテープは、玄関の上がり框から奥のリビングまで真っ直ぐに貼ってあった。



  「こ、これは……!」



  「何……かな? ククク」



  「九郎、知盛殿、いいですか、互いにこの白線を越えてはいけませんよ」



  「弁慶! この線は弁慶が貼ったのか?」



  「ええ、そうですよ」



  「ククク、……御苦労な…ことだ」



  「しかし、そちらに風呂も厠もあるのだぞ!」



  「それは使用して結構です。

   こちらにしても、そちらにキッチンと水道があることになるのですから」



  「かえって、面倒なのではないか?」



  「こうでもしなければ、君が知盛殿にじゃれついてしまうでしょ」



  「じゃれついて……、俺は子犬ではないぞ」



  「子犬でないから、かえって面倒なのですよ、まったく。

   ここまで九郎がはしゃぐとは、僕の読みも甘かったと言わざるを得ませんね」



  「歓待……されている…のだろうな、ククク」











08/12/13 UP
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