帰らないの? ヒノエくんルート・2月U

〜ヒノエ 倒れる?〜












   「え!? ヒ、ヒノエ? どうかしたのだろうか? ヒノ……」



ヒノエに抱きつかれた格好となり、敦盛は慌てる。



   「ヒノエ! と、とにかく寝室へ」



ヒノエの表情が分からない。

次の瞬間



   「プー、アハハハ、敦盛、やっぱりお前は、可愛いね」



と抱きつかれたまま、耳元で笑うヒノエを

それでも心配そうに敦盛は



   「本当に冗談なのか?」



   「いつもなら悪い冗談だって、怒る所じゃん?」



   「いつもなら、だ。今のお前の体は、妙に熱っぽい」



   「それは愛しいお前に……2…、3…、ああ、4日ぶりに会えたから」



   「本当にそうだろうか?」



   「嫌だな、どうして、そんな事を言うんだい?」



   「『冗談』も『4日ぶり』も、どちらも……

    とにかく、中に入って、横になったほうがいい」



と、敦盛は、ヒノエを逆に抱きかかえて中に運ぼうとする。



   「おいおい、ホントに冗談だって」



   「その割には、この手を放してくれないのは?」



   「それは……、お前が愛しいからじゃん」



   「そんな台詞とこんな態度は、神子にだけしていればいい」



   「本当に、こんなことをお前の目の前で、望美にしたら

    『殺すぞ』って眼で睨む奴の言う台詞とは、思えないね」



   「まあ、こんなに何人もの女性の香の付いたお前では、

    いかに心の広い神子といえども『花断ち』ものだろうな」



え?っという顔で、ヒノエは自分の腕の匂いを嗅ぐ仕草をする。

そのまま抱きかかえられて、ヒノエは寝室のベッドに放り投げられる。



   「全然、色っぽくないお姫様ダッコだな」



   「いいから寝間着に着替えて、横になることだ」



   「冗談じゃん、病人扱いは」



   「ヒノエ!」



   「……」



   「無理をするのも、限度はわきまえてにするべきだと思う。

    何をやっているのか……、詳しくは知らないが。
    現世界こちらで大学受験の為に奔走しているという話は、神子や譲から聞いている」



   「それだけじゃん」



   「ネットトレードも相変わらずのペースでしている」



   「それも、普段通りじゃん」



   「神子というものがありながら……女性を方便で使うのはどうだろうか」



   「方便! おい、いくら敦盛でも」



   「それに」



   「……それに?」


   「異世界あちらの熊野の匂いもする……」



   「! 敦盛……」



   「もう一度言う。何をやっているのかは詳しくは知らないが、

    無理をするのも、限度はわきまえてにするべきだと思う。

    お前は……、

    そう、スーパーマンや仮面ライダー電皇のような架空の超人ではないのだから…」



   「心配してくれるのか?」



   「神子が悲しむようなことは」



   「お前は?」



   「私? 私は……ああ、心配だ」



   「そ」



敦盛は赤くなった顔を隠すように「靴は脱いだほうがいい」と吐き捨てて、

寝室から出て行った。



   「お前がかってに、担いできたんじゃん!」



気怠い体で、靴を脱ぎ、服を投げ捨てるようにして、ベッドに潜りこむ。



少しの間があって、玄関のドアの閉まる音がした。



   「やれやれ」



ヒノエは大きく息を吐いた。

敦盛らしくもない、ドアの閉め方だ。



普段なら、まるで猫のように用心深く

音をたてるような所作など微塵もさせない敦盛なのだ。



こっちの様子を窺っていて、ベッドにとりあえず入ったのを察して

今度は、出かけるという合図のようにドアの音をたてて閉めて。



   「やれやれ」



ヒノエはもう一度言った。



敦盛は何処まで気づいているのだろう?



ネットトレードは生活の手段

受験のことは公然の事実



だが、彼女達のことは…


異世界あっちの熊野の匂い?



敦盛の鼻は、何処まで利くんだ?



それとも引っかけ?



いや、あいつはそんな駆け引きをするタイプじゃない



   「異世界あっちの熊野の匂い……ね」



いろいろ考えているようでいて

あっさり眠りに落ちるヒノエであった。











07/12/19 UP

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