帰らないの?  景時さんルート・6月30日T

〜喫茶cafe‐restaurant du dragon noir開店〜












「cafe‐restaurant du dragon noir」


今年の海開き前日である6月30日に、梶原兄妹も仰天するほど盛大な開店記念パーティーが

熊野の3人組の企画で開催された。







鎌倉市長や鎌倉商工会会長、日本喫茶店協会連合会会長だけでなく



ブラジル観光協会会長とブラジル大使代理。

インドネシア大使館1等書記官と同国観光大使。



ハワイ州副知事と、ハワイ州の商工会代表が、

たまたまハワイでオフを過ごしていたあのビリー・ゲイルと共に

彼の自家用ジェットでこのためだけに来日するという

外務省も把握していなかったゲストが登場し、内閣府も対応に追われ、

急遽、外務省アジア太平洋局副局長と内閣政務副次官を寄越した。



ジャネーズの若手アイドル2人

時代劇スターの松形祐樹と梅沢登喜雄も列席し、

湘南にたまたま観光で来ていた老若男女は

口コミで七里ヶ浜に殺到した。



また、東京芸大と神奈川県民交響楽団の混成楽団の、派手なオープニングファンファーレの中

世界的なテノール歌手ホセ・カレースキがソロをとるというイベントまで催され



慌てた神奈川県警が周辺1Kmにわたって厳重な警備体制をとったという。







厨房の奥では、

当の主賓であるはずの二人が

外の盛大なレセプションの進行を聞きながら



   「あ、兄上……」



   「さ、朔……どうしよ〜」



と、手に手を取って小さくなって震えていた。



   「何やってるんですか! 二人とも」



   「ゆ、譲殿!」

   「ゆ、譲君!」



   「早くしないと、間に合いませんよ!」



   「で、で、でもさ〜、あんなに大勢になるなんて、

    ちっとも知らなかったから、こんな小さなケーキしか」



   「いいんですよ。

    要はお二人が作ったものが、場を飾ることが大切なんです。

    さ、手伝いますから、デコレーションを終わらせてしまいましょう」



   「譲殿……」



こんな時、やはり頼りとなるのは兄上より譲殿だと、改めて確信した朔であった。







   「はぁ……」



   「どうしたんだい? あんたらしくもない」



   「ヒノエ……、どうして、こんな大事にしてしまったのですか?」



   「パーティーは派手な方がいいに決まってるじゃん」



   「『相応』というものは、あるでしょう」



   「景時兄妹に、鎌倉市長や日本喫茶店協会連合会会長は『相応』だと?」



   「ハワイ州副知事やビリー・ゲイル、外務省アジア太平洋局副局長、内閣政務副次官

    ジャネーズにハロープロ、松形祐樹、梅沢登喜雄、ホセ・カレースキ!!

    君の顔の広さは十分に分かりましたが、そこまで」



   「ちょ、ちょっと待ってくれ。

    ブラジルとインドネシアとハワイは確かにオレだけどそれ以外は」



   「それだけでも十分過ぎますよ」



   「たぶんホセ氏は私だと思う」



   「敦盛君」

   「敦盛! へぇ、やるじゃん。

    世界の至宝とまで云われる、3大テノールの1人と知り合いとはね」



   「そうだったのか? 知らなかった」



   「へ?」

   「え? 知らなかったのですか??」



   「はい…」



   「じゃあ、どうして?」



   「先日の私のコンサートを聴かれたらしくて、会いたいと仰られて…

    今日はこちらだと伝えただけなのだが」



   「それがどうして、ソロとってるんだ?」



   「さ、さあ? それは私にも」







将臣を従え、息も荒く走ってくる望美が

到着した。



   「神子」



   「あ、リズ先生♪ よかった、間にあった」



   「だから! 走らなくたって間にあうって言っただろっ! 何度も言った!!」



   「だって、早く見たかったんだもん!!

    弁慶さんからも、ヒノエ君からも、敦盛さんからも

    それにリズ先生からも、知り合いを呼んだから来いって

    連絡もらったんだよ!」



   「たかだか景時ん所の喫茶店の開店パーティー……って、おい! 派手だな〜」



と、店の前の人だかりに絶句する将臣であった。



   「それなのに、こんな日に模擬試験だなんて!」



   「神子、そちらはどうだったのだ?」



   「はい、リズ先生。全力を尽くしてきました」



   「そうか」

と、嬉しそうに微笑むリズヴァーンの後ろから



   「全力……ま、モノは言いようってな」

と言う将臣の声に



   「神子」

   「望美」

   「望美さん」

   「神子姫」



と八葉が集まってくる。



それに



   「よう、お嬢ちゃん、久しぶり

    あいかわらず、お釣りがくるほど元気だね」



と言う声が重なる。



   「あ! 松形さん! こんにちわ!!」



   「リズ先生、今日はお招きいただきまして」



   「大先生、わざわざ御足労を願って、すまない」



   「よして下さいや。リズ先生に『大先生』なんて呼ばれた日にゃぁ、居心地悪くていけねぇ

    それにしても、お知り合いの開店、おめでとうございます。

    それにしても、単なる喫茶店じゃ、無ぇですね、こりゃぁ」



   「?」



   「ま、賑やかなこたぁ、好きな方ですから、おもしろいですけど。ハハハ」



   「……」



   「あ、紹介します。こいつぁ、おいらの釣り仲間、ってぇか、

    こいつも時代劇やらチャンバラのドサ廻りをやってる役者でね、梅沢登喜雄って言います」



サングラスを取って、丁寧に頭を下げる梅沢登喜雄に

リズヴァーンも頭を下げる。



   「初めまして。お噂はかねがね、この松っつぁんから。

    是非とも一目お会いしたくて、ついてきてしまいました」



   「噂?」



   「『湘南にすっごい人がいる』『その人の知り合いなんだ』って、

    いっつも松っつぁんが自慢するんですよ。ずるくないですか? ねぇ、リズヴァーンさん」







若い女性達の歓声の中

その女性達の視線を集める二人が、九郎に近づき、話しかけてくる。



   「やあ、柿沢! 来てくれてうれしいぞ」



   「九郎さん、盛大ですね」



   「ああ、俺もこんなに大騒ぎになるとは思わなかった」



   「あ、紹介しますね。

    こいつは、僕とコンビ…、グループ、あ、2人組で歌っている相方の、古居翼です」



   「初めまして」



   「そちらの女性にょしょうは?」



   「え?」



柿沢と古居が同時に振り返ると、

シャンパングラスを片手に、恐ろしい程の笑みを顔いっぱいにした女性が仁王立ちしていた



   「太木先生!!」



   「ひどいじゃない、カッキー♪ 鎌倉に来るなら、一言言ってくれなきゃダメじゃない」



だじろぐジャネーズの2人と女性を交互に見比べて



   「どなた?」



と、臆面もなく柿沢に尋ねる九郎であった。

九郎を見る太木先生と呼ばれた女性の眼が妖しく光ったのは言うまでもない。











07/12/07 UP

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