リターン2 弁慶&九郎 暴走ヤンチャ






  「北関東暴走連合の言うことが聞けないっていうのかよ」

  「ぼうそうれんごう??」

  「おい、お前ら! カノジョのお友達のミコちゃん達が近くにいるはずだ。
   探して、連れてこいや」

  「神子達はダメだ!」

  「俺達がいいって言ってるんだよ!」




  「敦盛君」

  「お! じゃぁ〜ん、お友達登場……って、外人かよ」

  「なんだ、ミコちゃんじゃねぇのかよ」

  「外人?」

  「野郎に用はねぇんだよ!……日本語わかりますかぁ? ギャハハハハ」

  「野郎で、すみませんね」

  「お、日本語分かるんだ……って、あつもり???」

  「こいつ、こんな顔してて男かよ?」

  「で? お前ぇは、こいつの何なんだよ??」

  「いい服着て、お金持ってそうじゃね。」

  「困った人たちですね」

  「弁慶殿、すまない」

途端に、敦盛を取り囲んだ暴走族達が爆笑する

  「ぎゃははは、何? 何の冗談?」

  「だひゃひゃひゃ! 笑わせるぜ。こんな優男やさおとこの金髪が『弁慶』!?」

  「僕の名前がそんなに面白いですか?」

  「ヒーヒヒヒ、わ、笑いすぎて腹が痛てぇーぜ」

  「なにが『弁慶』だよ、ダハハハハッ」

  「汚い顔を近づけて笑わないでくれませんか。
   あなた方のような下劣な人間に笑われる名前とは思いませんし、ね」

あくまで、ゆったりと笑みを浮かべる弁慶
その態度に辺りの様子は一変し、気色ばむ暴走族達

  「べ、弁慶殿」

  「敦盛君。さ、行きましょうか」

  「ま、待てよ!!」

  「何、勝手に行こうとしてるんだよ! この金髪野郎」

  「そんなこと言ったんだ、それなりの覚悟はしてんだろうな、あぁ!!」

  「『北関東暴走連合』……ですか。」

  「何だぁ!?」

  「『せんす』のかけらもない名前を、僕は笑わないであげたのですから、感謝して欲しいものですね」

  「な、何だとっ!!!」

  「まあ、『北』って付けなければならないところに、謙虚さと、一抹の哀れさを感じますけれど」

  「野郎!! 関東最強の『北関東暴走連合』おれたちの恐ろしさをおもいしらせてやるぜ!」

  「やっちまえ!!」

弁慶はにっこり笑って
  「やれやれ、どこの世界でも、品の無い人の台詞はこっちが恥ずかしくなるくらい同じなのですね」

殴りかかってきた男が、
あっという間に2人、地面でうめいている

  「!!!」

  「この優男、意外とやるぞ」

  「敦盛君、その建物の陰に隠れていてくださいね。ちょっと身体を動かしますから」

  「この野郎っ!!」

再び、殴りかかってきた男達、
ひらりと身をかわし、
替わりに暴走族が1人、はでに宙を舞って、地面に叩き付けられた

  「こいつ、何か格闘技やってるぞ」

  「おい、他の連中を呼んでこい!」

  「野郎ぉ、もう手加減しねえぞ!」

  「大丈夫ですよ。僕は手加減してあげますから」

  「野郎、ふざけたことぬかしやがって!」



呼ばれて駆けつけた暴走族の仲間は、
各々、木刀や金属バットやナイフを持っている。

  「弁慶殿!」

  「やれやれ、面倒ですね………!!」

いつの間にか、敦盛の周りを3人の暴走族が取り囲み
勝ち誇ったようにうすら笑いを浮かべ

  「へへへ、おい! 金髪!」

  「こっち見ろや!」

  「! 敦盛君
  君達、忠告しておきますが、敦盛君は怒らせない方が良いですよ」

  「笑わせるな!」

  「こんな女男に何ができる!」

  「どう受け取ろうとそちらの自由です。ただ、忠告はしましたからね」

言い終わらないうちに、
後ろから弁慶に木刀で殴りかかった男
が、逆にうずくまる。

  「動くんじゃねえよ!! 言ったろう」
泣きそうな声で、敦盛を囲んだ男の一人が叫ぶ

  「嫌ですよ。動かないと殴られますからね」

  「この金髪野郎、ふざけた事を次から次と」

  「動くと、このあつもり君のきれいなお顔が !」



  「きれいな『お顔』が、どうしたというのだ?」

  「てててて! 放せ! 放せ!! 放して! お、折れるぅ!」

  「厠から出てみれば、いったい何の騒ぎだ? 弁慶??」

他の2人はすでに気を失っているのか、その場にへたり込んでいる。

後ろ手にひねり上げられた右手のナイフを奪い、九郎が暢気に尋ねた。

  「ああ、九郎。君にしては意外ですが、ちょうど良いところに来てくれましたね。
   何やら、この方々が」

弁慶が言い終わらないうちに、また何人かが弁慶に襲いかかる。

  「人が話をしているというのに、分からない人達ですね」

軽く舞うように、弁慶がその間をすり抜ける。
と、襲いかかった全員が、その場に崩れ落ちる。

  「何だか分からんが、弁慶! 助勢する!!」

  「駄目ですよ、九郎」

  「何?」

  「助勢ではなく、君が全部を引き受けてください。
   これでも今日の僕は、車の運転で疲れているのですから」

  「将臣なら、こんな時『オーケー』というのだろうな!」

  「発音がちょっと違いますね、九郎」

  「ふ、2人して、ふざけやがって!!」

ナイフをもった男が2人、九郎に飛びかかる
後ろ手にひねり上げていた男を突き放し、
1人をかわし、もう1人の突き出したナイフをはたき落とし、その手をねじりあげる。
そのまま、かわした1人を蹴り上げる。
  「ぐぅ!!」
蹴られた男は崩れ落ちる。

人間が、不思議なほど高くに投げ上げられて、続いて、受け身も取れず地面に激突する。
  「弁慶、なんだか、懐かしいな」

弁慶も、きれいに1人を投げ飛ばしながら言う
  「はい?」

九郎は左右から襲いかかる相手を身軽にかわし、後ろの男に蹴りを入れて
  「昔、五条橋辺りで、よくこんな事してたじゃないか」

木刀を振り下ろす相手より速く、みぞおちに拳をめり込ませ
  「僕は、あまり思い出したくないですね」

金属バットを持った男の足をきれいに払い
  「そうだろうな、俺に負けて暴走ヤンチャから引退したのだからな」

裏拳をこれでもかと男の鼻にめり込ませ
  「到底、賛同しかねる話ですね。九郎」

すれ違いざまに、手刀を男の首筋にめり込ませ
  「恥じることはないさ、弁慶」

  「事実とは違いますね、九郎。
   僕が『思い出したくない』と言ったのは、若気の至り、という意味で」

  「五条河原での決闘」

  「それは九郎、君が自分に都合良く脚色した思い出ですよ」

  「何だと!」

  「僕がいつ、九郎などに負けましたか?」

  「『など』とは、何だ! 『など』とは!! 負けたのは事実だ!」

  「いいえ、負けたことなどありませんよ」

どちらかが、何かを言うたびに人間が1人、また1人と
あり得ない高さに投げ飛ばされては、落ちていく

  「あ、あの、2人とも落ちついてはくれないだろうか」

  「敦盛?」
  「敦盛君?」

  「すまない。ただ、これ以上2人で言い争うと、他の人間への手加減が行き届かなくなってしまう」

  「あ!? ああ、そうだな」
  「僕としたことが、九郎などの言葉に少し熱くなってしまったようですね」

胸ぐらを掴んでいた手をゆるめる九郎。
とうに気を失っている相手は、その場に崩れる。

  「『など』って言うな! まったく
   それにしても、こいつらは弱いな」

投げようとして担ぎ上げていた相手を、そっとおろす弁慶。
相手は恐怖で、その場にへたり込む。

  「戦の無い世界ですからね。」

弁慶は目の前にへたり込んでいる男のナイフを、手に取り

  「このような武器を持っているだけで、自分が強いと錯覚するのでしょうね」




誰かが(他に人がいるとも思えなかったのだが)通報したのだろう、遠くにパトカーのサイレンが聞こえる。



九郎達には、その音が具体的には何を意味するのかが分からなかった。
しかしそこは、百戦錬磨のカンが教える
  「ここを離れた方がいいようですね」

  「ああ、もう相手になる奴もいないようだし」

  「九郎殿、弁慶殿、申し訳ありません、私などのために」

  「敦盛君。君が気に病む事ではありませんよ」

  「そうだ、敦盛。
   それより早く行こう。時間を喰った。
   望美達が待っていることだろう」

  「そうですね。みんなには、九郎のトイレが長かったとでも言っておきましょう」

  「おいおい、止めてくれ」

  「冗談ですよ、九郎」

  「お前は信用がおけないからな」

  「それより、これを、はい。僕はナイフという刃物5本です」

  「あ、俺は3本だ……、でもはたき落としたのがあと2、3本はあったはずだ」

  「取りに戻るのは、規則違反ですよ。
   ね、こんな九郎にどうして僕が負けたなんて、よく言えますよね、敦盛君」

  「『こんな』って付けるな! あ、あいつらは、ろくな刃物を持っていなかったものだから……なぁ、敦盛」

  「言い訳もなし、でしたよね。敦盛君も困ってるでしょう。」

  「い、いや。あの」

  「こんな九郎にどうして僕が五条河原で負けたなんて






遠ざかっていく3人の不思議な男達の会話を聞きながら、


  「東京は怖いところだ」


意識のある者は全員
身にしみて心から思う『北関東暴走連合』の面々であった。







07/06/10 UP


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