拍手 2  みんなの恐いものは?編

いざ、お台場リターンズ3の時期


07/08/16 UP






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  「ねえねえ、景時さんがお台場でつかった術って、どんななの?」

  「自分の心の深淵に潜む、最も畏怖するものを具象化して見せるってものなんだけど」

  「???」

  「う〜ん、口で説明するのは難しいな」

  「やってみせて」

  「え?」

  「景時さんがついてるんだから、一瞬で術を解いてあげれば、問題ないでしょ」

  「ま、まあ、そうだけど」

  「じゃあ、ちょうど、あそこで居眠りしてる九郎さんにお願いします♪」

  「え、いいのかなぁ?」

  「一回だけだから、ね、お願いします」

  「う〜ん、じゃ、一回だけだよ」

景時が呪を呟く、と、すぐに

  「うえぇ〜ん、リズ先生、ごめんなちゃいごめんなちゃい、破門だけは嫌でちゅぅ〜」

と、泣きながら飛び起きる九郎。
嫌な夢を見た、と思ったのか、こちらを向いて照れている。
笑いをこらえながら部屋から逃げ出す景時と望美。

  「九郎さんって、頼朝さんや政子さんより、リズ先生に破門されるの恐いんだぁ」

  「ちょっと意外だったねぇ」

  「もう一度だけ、お願いしてもいいですか?」

  「え?」

  「あそこで料理してる譲君。何が恐いのかちょっと興味あるじゃないですか」

  「私も是非知りたいわ」

いつの間にか後ろに立つ朔。

  「朔ぅ」

  「兄上、お願いします」

  「ふ、二人とも笑った顔が恐いよ〜」

仕方なく呪を呟く、と、突然

  「うわあああぁ!! 先輩、料理だけはやめてください!!!」












  「景時さん、も一度、例の『恐怖の呪文』見たいな。」

  「そういう名前じゃないんだけど……望美ちゃん、もう止めない?」

  「だって、みんなが何を恐がるか知りたいじゃないですか!」

  「譲君に言われたこと、ホントにショックだったんだね」

  「そんなこと無いですよ」

  「だってあの日以来、先輩が口をきいてくれないって、譲君、落ち込んでるよ」

  「あ、景時さん。白龍が来た。ちょうどいい、白龍でお願い。ね。」

  「望美ちゃん、あからさまに話題変えたでしょ」

  「神子、何?」

  「白龍、お願い。景時さんの術の実験台になって」

  「いいよ。だけど、私に呪術が効くとは思えないけれど…」

  「そう言われちゃうと、気になっちゃうな〜。俺の呪術が効くのかってね♪
   オレ、頑張っちゃおうかなぁ〜っと」

景時が呪を呟く、と、突然

  「わ、若い弁慶が……私を滅しに来る」

と、その場にへたり込んでしまった。

  「そうだ……、京の龍神を消滅させたの、弁慶さんだった。」

  「朔がここにいなくて良かったよ」

  「何で私がいないと良いのです? 兄上??」

  「わ、いつからそこに?」

  「今、買い物から帰って来たところですけど? 
   ほらほら白龍、そんなところに何へたり込んでるの? 通してちょうだい。
   兄上も、荷物を運んでください。」

聞かれていないことに安堵しながら景時は、
ふと『朔の恐いもの』を知りたい衝動に駆られた。

  「景時さん、悪〜い笑顔してますよぉ」

  「や、嫌だなぁ、望美ちゃん」

そういいながら、呪を唱える。と、突然、朔は望美の腕をつかんで庭に走り出す

  「望美、協力するって言ったわよね!! た、体重が、体重が!!!
   ダイエットォ!! 手伝って!!!」

泣き叫ぶ朔を見送り、何となくホッとするお兄ちゃん心であった。












  「ヒノエ君の『恐いもの』って、何なんだろう?」

  「ヒノエ殿に『恐いもの』なんてあるのかしら?

いっつも『オレに不可能は無い』って顔で自信たっぷりでしょう?」

  「だからこそ、ね?」

  「ええ、そうね。でも望美、いいのかしら?」




  「と、言うわけで、景時さん、お願いします」

  「兄上、こうなった望美の好奇心は、満足するまで誰にも止められないわ。」

  「とほほ、呪は遊びじゃないんだけど……しかたない、
   神子様のたっての願い、頑張りましょう。」

リビングで弁慶と話をしていたヒノエに、3人はこっそり近づき、
呪を呟く景時。
ワクワクして様子を見つめる望美と朔。
が、様子が変わらない。

  「兄上、失敗ですか」

  「い、嫌!? 変だな、しっかりかかってる筈なんだけど……。も一度」

といって、また呪を唱える。
ヒノエがこちらに近づき

  「いい加減にしてくれない。
   神職に幻術かけるなんざぁ、いい度胸してるじゃないか。え、景時」

  「すっごぉ〜い、分かっちゃったんだ、ヒノエ君」

  「ヒノエ殿に幻術は効かないのですね、ちょっと見直しました」

  「嫌だなぁ、朔ちゃん。遠慮せずに尊敬してくれてかまわないぜ。
   そして尊敬がいつしか献身的な愛に」

  「ヒノエ殿」

  「ヒ、ヒノエ君、本当にオレの呪術、効かなかったのかい?」

  「当然」

そういってヒノエは部屋を出る。
部屋の戸を閉めた途端、噴き出す脂汗。

  (危ない危ない、危うく呪術に負けるところだった。)

と脂汗を拭う。

ヒノエの恐いもの、それは呪をかけられた瞬間も目の前にいた鬼若・弁慶その人であった。
いつもその『恐いもの』と闘っているんだ、ヒノエ君、ファイト!
それ以外のことなんて余裕だよね、ヒノエ君。












  「白龍の『恐いもの』って、弁慶殿だったらしいけど、何故なのかしら?」

  「ど、どうしてかなぁ? お兄ちゃんには分かりません」

  「兄上、何か隠してませんか?」

  「さ、さあ? ね、ねぇ、望美ちゃん」

  「え! え? ええぇ、ええ、そうですね」

  「なに狼狽えてるの二人とも?」

  「何でもないよ、朔。

   ! それより、その弁慶さんの『恐いもの』って何だと思う?」

  「望美、話題を逸らした?」

  「そんなことないよ、ね、景時さん」

  「御意ぃ〜っ、そんなことないよぉ」

  「ま、いいわ。それより、弁慶殿の『恐いもの』……、
   ヒノエ殿と同じで、無いのではないかしら。
   ほら、ヒノエ殿のお父様もそうだけど、熊野出身者って自信たっぷりだから」

  「それにイタリア人気質だしね」

  「イタリア人気質?」

  「女の人を見たら、口説くのが礼儀だと思ってる」

  「ああ、なるほど。血筋なのね」

  「嫌ですね、兄やヒノエほど、がっついて見えるなんて。
   僕もまだまだ修行が足りないってことでしょうかね」

  「弁慶さん」「弁慶殿」「弁慶」

  「僕自身にもよく分からないのですよ。
   こんな完璧な僕は、いったい何を恐れているのか。
   ここはひとつ、この疑問を晴らしてもらいましょうか。
   お二人の好奇心も満たしてさしあげられるのでしょうし、ね。
   景時、お願いしますね」

  「ええ? 良いのかい?」

  「はい、自分を知る、得難い機会でしょうからね。」

景時が呪を唱える。
と、一瞬のうちに、部屋の隅でフードを被って小さくなっている。

  「弁慶さん?」

  「驚きました、景時の呪術がこれほどのものだったとは。」

  「! 嬉しいねぇ〜、それって褒めてくれてるんだよね」

  「兄上、喜びすぎです。めったに他人から褒められてことがないからって」

  「いいえ朔殿、景時の幻術、どんなにでも自慢すべきものです」

  「くぅ〜っ!! 嬉しいなぁ。
   源氏の軍師、かの有名な弁慶その人に、ここまで褒められるなんて。??
   朔? 何、望美ちゃんのほっぺたつねってるのかなぁ?」

  「痛たたたた、朔、夢じゃないみたい」

  「やれやれ、そういう事……」

  「で、弁慶さん♪ どんな『恐いもの』を見たんですか?」

  「……」

  「弁慶殿?」

  「…………鬼若……でした。」

  「鬼若?」

  「弁慶殿の若い頃の名です」

  「ええ、若い頃の僕…………恐ろしい……
   ……若気の至りとはいえ、良くあんな恥ずかしい格好で、
   あんな恥ずかしい事、できたもんです。」












  「なんか八葉のみんなの『恐いモノ』知るの、癖になって来ちゃったな〜」

  「最初はやめようって言ってたの、景時さんの方なのに」

  「兄上はもともと、覗きとかストーカーまがいのことが好きですからね」

  「さ、朔ぅ、誰かに聞かれた誤解されるような言い方、やめて。
   お兄ちゃん、お仕事だったんだよ」

  「あら、趣味と実益が兼ねられて、良かったじゃないですか」

  「お兄ちゃん、泣くよ……頼朝様の御命令だったんだってばぁ!」

  「そういえば、すっごく興味ありません?」

  「何、望美?」

  「……頼朝さんの恐いモノ♪」

  「!!! 考えもしなかった!
   そうだよ、その手があったんだぁ!!
   望美ちゃん! 逆鱗貸して!!」

  「兄上!」

  「頼朝さんに呪を掛ける前に、景時さん、死にますよ!!」