拍手6  バレンタイン編  08/02/05 UP













A

   「お前行けよ」

   「う〜ん……、やっぱりお前行ってこいよ」

   「え〜…、朔姉ちゃんのだけだったらな〜」

   「そんなん、誰だって思ってるって!」

   「だよな〜…」

   「何で、いっつも、も一人くっついてるんだよ〜」

   「ハロウィンの時も、クリスマスの時も……」

   「オレなんかな〜、かあちゃんがあそこの店で誕生日用のケーキ頼んだら」

   「おー! リッチじゃん」

   「望美姉ちゃんのクッキーが付いてきたんだぞ!!」

   「た、食べたのか?」

   「チロが……」

   「チロって、お前んとこの犬だろ」

   「アフガンハウンドにチロってネーミングは……、ま、置いといて。 で?」

   「一口喰っただけで、震えて3日くらい犬小屋から出てこなかった……」

   「やっぱり…」

   「生きてるだけでもラッキーだったんじゃん?」

   「う〜ん……」

   「やっぱり貰っても、望美姉ちゃんのは食べないってことで」

   「命、惜しいもんな」

   「でも、やっぱ、悪いような……」


今回も悩みのつきない、かわいい子供達であった










B
   「きゃああああああ〜!!!」

   「朔!! ど、どうしたの〜!?」

   「あ、兄上!! 何ですか!!! このボールの中に、何を入れたんです!!!」

   「え〜! オ、オレじゃないよ〜」

   「だって動いてますよ! この変な茶色いモノ! あ、兄上の式でしょ!!」

   「違うよ違うよ!」

   「あたしのだよ〜!」

   「!! 望美!?」

   「!! の、望美ちゃん?」

   「今「あたしの」って言ったわよね?」

   「うん」

   「何なの? これ??」

   「チョコレートだよ」

   「チョコ!!……!! ふつう、チョコレートは動かないものよ」

   「へへへ、あたしが溶かして固めるとね、それだけなのに、何故か動くの」

   「何故か動くのって……、何をそんなに誇らしそうな顔をしているの?」

   「凄いでしょ」

   「す、凄い…? そうね…、ある意味凄いわ」

   「さっきまでキッチンテーブルの上、動き回るから、殴ったらおとなしくなって、自分からそのボールの中に入ったの」

   「兄上〜!」

   「朔う〜〜!!!」

   「ど、どうしたの?? 朔? 景時さん?」

   「だって、だって…!」

   「だ、だってだって〜!!」

   「これ、チョコレートなんだよ〜 溶かして、固めただけなんだから食べられるよ〜」

   「え!! これ……を、た、食べる!!!!……」

   「う、動いてるよ〜…、望美ちゃん…」

   「大丈夫だよ、大・丈・夫♪ ただのチョコレートなだけだから」

   「あ、兄上!」

   「けっこう甘くて美味しいよ」

   「え〜〜〜!!!」

   「プキプキって鳴いてるよ〜〜〜〜!」

   「こうなると、ある意味、才能ね…」










C
   「大学、行くたびにチョコレートをやたらと貰って困るんだよね」

   「フ、やだなヒノエ。自慢したいなら、正直に自慢してくださって結構ですよ」

   「へぇ…、あんた、なんか余裕じゃん」

   「いえいえ、僕なんか、君のようにはいただけませんからね、数は」

   「妙に引っかかる言い方だね、量では負けても質では負けないってことかい?」

   「女性からの賜物で競争するようなことはしませんよ、子供ではないですからね」

   「へぇ、オレは子供だと」

   「嫌だな、どうしてそう言葉尻をとらえては、つっかかってくるのかな?」

   「あんたが、棘のある言い方しているんだろうが!」

   「ふ〜ん、君のは手作りが多いですね。羨ましいな」

   「勝手にラッピングを開けるな! って、あんたにマダムの手作りが贈られてきたら恐いね」

   「どうしてです?」

   「どんなものが入ってるのかが見ものだからね、チョコレートの中に」

   「君じゃありませんからね、僕は一服盛られるようなことはありませんよ」

   「じゃ、あんたが盛る方かい?」

   「ひどいな、君じゃあるまいし」

   「あんたには言われたくないね…、へぇ、こいつは凄いね
    これは、ベルギー本店でしか売ってないチョコじゃん
    ヒュー、こっちは有名なショコラティエの特注品…、十粒で1万はするっていう」

   「勝手に人の物を見ないで下さい」

   「あんたが先にやったんだろ!!」

携帯の着信音

   《 ヒ、ヒノエ! 助けてはくれないだろうか 》

   「あ、敦盛! どうした?」

   《 今朝ほどから、宅配便が着続けて 》

   「なんで?」

   《 分からないのだが……、とにかく部屋が埋まりそうなのだ! 》

   「中身は? あ、……チョコか」

   《 何故分かるのだろうか? 》

   「まあね。いいから、全部捨てな」

   《 ど、どうしてだろうか? 》

   「いいから!」

   「フフフ、嫉妬ですね、可愛い」










D
   「先生!」

   「九郎さん、ずる〜い! 私が先なんだから! 先生〜!」

   「二人とも、どうしたというのだ?」

   「先生! チョコレートです♪ 受け取ってください!」

   「先生! 甘い物がお好きでしたよね、どうぞ受け取ってください!」

   「九郎さんのなんて、市販品でしょ! あたしのは手作りなんですよ♪」

   「兄弟子を差し置いて! 望美! お前の手作りチョコは何故、動くのだ!!」

   「動… く… ?」

   「そうです、こんな得体の知れないものなど、お口にされてはなりません!」

   「ひっど〜い! けっこう、美味しいんだから!!」

   「お、お前…、た、食べたのか??」

   「バレンタインの日なんだから、いいじゃないですか!」

   「それが問題じゃない! 先生を殺す気か!!!」

   「ひっど〜〜〜い!!」

   「二人とも止めなさい。ところで、その「ばれんたいん」とは何なのか?」

   「望美達の世界で、日頃の感謝や思いを甘い物に添えて贈る日だそうです」

   「それで……」

   「それで?」

   「それでって?」

   「一日中、宅配便で」

リズ先生が指し示す書道教室には、床一面に並べられた宅急便の山

   「こ、これ……」

   「全部…、先生宛…ですか?」

   「うむ」

   「すっご〜〜い!! めちゃくちゃ高級なチョコばっかり!!」

   「そうなのか?」

   「九郎さんの安物とは全っ然違います! ところで、差出人、先生は御存知ですか?」

   「いや」

   「世田谷、広尾、白銀台、鎌倉、芦屋、帝塚山、……高級住宅地ばっかり!?」

   「望美、『ロハスの達人』様宛にとなっているが、これは配達間違いでは?」

   「そうか……、先生、スローライフとかナチュラルライフとかの先駆者だもんね」

   「先駆者! そう、先生は先駆者だ。この世界でも先生の立派なことは分かるのだな」

   「そう、ですね……。ちょっと複雑な気分だけど」










E
   「兄さん…、今年は先輩のチョコ食べずに済みそうだな」

   「望美は、景時ん所か?」

   「いや、作った後でどこかに出て行ったそうだ」

   「じゃ、たぶんリズ先生のところ、だな。賭けてもいいぜ」

   「俺もそう思うから賭けにはならないよ」

   「賭け… が、 …どう、したと?」

   「知盛、お前には関係ないことだよ」

   「ククク、騒ぎの原因は……、これか?」

   「これかって…… !! これは先輩の作ったチョコ!!」

   「ほう、さすがは八葉だな、白龍の神子お手製だと分かるとは…な」

   「知盛、お前、知らないだろうから、教えとくけどな」

   「ククク、何を……かな? …還内府殿あにうえ

   「世界広しと雖もな」

   「雖も?」

   「動くチョコを作れるのは、望美だけだ」

   「ほう、 さすが…、だな」

   「しかも、あいつはこれを食うんだぞ!」

   「さすがは、 オレが認めた、獣のような女 …だけのことはある」


ババ抜きのババを持ってきちまって……、ったく!
あ〜あ、結局、今年もこれの処理をするのか