将臣、拾われちゃった!
ここは平安末期
21世紀人には、なにかとつら〜い世の中だ。
トイレと着替えは何とか平安風を身につけた。
しかし、風呂と歯磨きはダメだ。
なんかの本で読んで何となくは聞きかじっていたけれど、平安の貴族がこんなに不衛生だったとはな。
妙な割り箸みたいな香木で歯をガシガシ擦るのが歯磨きらしいんだが、
歯ブラシが無いと歯と歯茎の間がどうもスッキリしないんで、作らせた。
ラッキー
こっちの職人もいい仕事するぜ。
ま、歯磨き粉は我慢して、粗塩で何週間かぶりに磨いてすっきりした。
小学校の頃は歯磨きが面倒で、良く祖母ちゃんやお袋にギャーギャー言われてたけど、
10年以上経ってから分かった気がするぜ。
歯みがきってのも、いいもんだ。
関西の11月は結構寒いんだな、知らなかった。
風呂に入りたい。
風呂に入って温まりたいんだがな。
そう言ってから理解して貰えるまでに3日と半日かかった。
しかも、二位の尼を筆頭に女房が3人も4人も、恭しく湯の入った桶を捧げ持って俺の部屋にやってきて
「湯浴みが御所望とのことですので、御用意いたしました」
と言って、俺の服を脱がそうとする。
ちょ!ちょっとタンマ!! ストップ!
冗談じゃない! 衆人環視の中でストリップする趣味は無いぜ!
やっとの思いで1人にして貰って
(そこまでに女房に2人ほど「私ではお役に立てぬということでしょうか」と泣かれたのには、まいったぜ)
さあ、身体を拭けるだけでもラッキーだぜ、そう思ったんだがな……、
この桶の湯はいったいどんな遠くから運んだんだ?
ほとんど水じゃねぇか!
ウォータァー! ヘレンケラーか!!
それともう一つ。なんといっても飯だ! 飯!
ああ、譲の作るカレーが恋しいぜ。
この際だ、贅沢は言わねぇから、望美の作るレトルト・カレーでもOKだ!
く、食いてぇ〜〜〜!!!
こっちの食事が別にまずいとか、食えねぇって訳じゃないんだけどな。
味にパンチが無いのが寂しい。
チリソースもラー油も胡椒も無いんだよな……、あ〜〜あ。
その上、平安の貴族って奴は、量が、な。
信じられないくらい少食で、足りないのなんのって。
それでも1週間は我慢したんだぜ。
だがな、1週間目の夜、どうしても我慢できなくて、食い物を求めて屋敷の中をウロウロしちまった。
カップメンやハンバーガーは最初から期待してないが、夕餉の残り飯とか残りモノとかがないかなってよ、ハハハ。
それにしても平家の屋敷ってのは、もの凄くだだっ広いんだな。
1時間ほどほっつき歩いて、「残り飯を探す」という当初の目的から
「朝までに自分の部屋に帰り着いて寝る」に目的が移行しかけたちょうどその時だ、
ラッキーなことに、竈のある所に辿り着いた。
ここは言うなれば平安時代のキッチンルームだ。
しかも、超ラッキーなことに明日の朝餉の食材が準備されているじゃねぇか。
すこしくらい先に食っちまってもバチは当たらねぇよな。
そう思って、箱根子供自然キャンプで培った腕前で火を熾し、
その辺の野菜と小魚を鍋にぶち込んで、米も少々拝借して、和風のリゾットでも。
くう! いい匂いがしてきたぜ。
月明かりの手暗がりだから、あまり鍋の中は良く見えないが、ま、オッケーだろう。
リゾットだか雑炊だかちゃんこ鍋だか分からないけどな。
さて、仕上げに塩と醤油でもありゃぁいいんだが……
こう、暗いと何だか分からないな
塩は……。あん? 何だ? このキラッと光る包丁みたいのは……
「何者! 怪しい奴!! 動くな!」
おいおい、俺か? 俺に刀、突きつけてんのかよ!?
その上、この屋敷の警護の者が何十人と、この竈のある建物を取り囲んでいるじゃねぇか!
俺は怪しい者じゃ無ぇ!(って言いきる自信は無ぇけどな……)
「ククク……、…有川、昨夜は……大騒ぎ、だったな……」
「笑い事じゃ無ぇぜ。もう少しで、不審な侵入者ってことで斬られるところだったんだからな」
「昨夜の宿直が……俺で……よかったな…ククク。…感謝して……欲しいモノだ」
「冗談! お前、最初っから一番後ろでそうやって『ククク』って笑ってただけだろう」
「ほぉ……、御存知……だったとは……恐れ入る」
「しかも、あの騒ぎで結局、作った『リゾット』も食い損ねちまったぜ」
「ほお……、あれは…『りぞっと』……というのか。
ククク、塩味が……足りなかったが……、けっこう美味だった……」
「おまえ〜っ!!」
ああ、俺、平成に戻る前に餓死しなきゃいいけどな。
譲〜〜!!
完
wis様の追加発注リクエストということで、あっちの世界・臣視点で作ってみました。
1日遅れですが、将臣誕生日SSSでした!!
09/08/13 UP
