ここのサイトさまの「ひの」くんと「あつ」くんは
神子の「ヒノエくんと敦盛さんの小さい頃が見たい!!」という願望から、
白龍がヒノエと敦盛の気から生みだした、小さいヒノエと敦盛の分身です。
ヒノエと敦盛が小さくなっちゃったわけでも、2人の子どもなわけでもありません。


花見日和




「かげときがんばれー!」

「がんばってください、かげときどのー!」

「は〜い。御意ってね〜」

 子供達の期待の声援を受けつつ、景時は笑顔を崩さぬまま、慣れた手つきで銃の引き金を引いた。
 銃口から飛び出た弾が、標的に寸分の狂い無く当たり、その姿を大きく揺らがせる。
 そして。こてん と見事に転んだのに、ひのとあつの歓声が一際大きく響いた。

「はい、ゲット。うさぎさん、取れたよ〜」

「かげときどの、すごい…」

「すげー! ほんとにいくさぶぎょーなんだな、かげとき」

「… あはは。ま、たまにオレも疑わしく思うけどね、それ」

「こんどはきゃらめるな、きゃらめる。あと、ちょこぼーる」

「あつは… えーと… なんにしよう…」

「オッケー。おにーさんに任せなさい」

「やったー!」

 にこにこ笑顔の子供たちとは逆に、露天の店主の顔は、なんだか引きつり気味である。
 だが、多少悪いとは思うものの、ひのとあつがせっかくここまで喜んでくれているのだ。遊びとはいえ多少尊敬もしてくれたようだし、遠慮する気はさらさら無い。

「いつも、こんな楽しい射的ならいいんだけどね」

「ん? なんかいったか? かげとき」

「何でもないよ」

 銃に新しくコルクの弾を込めつつ、景時は苦笑して銃の標準を合わせるべく片目を閉じた。
 パーン と、景気よく上がった銃声が、祭囃子と雑踏の中に消えていった。




「きゃらめるー。ちょこぼーる。ぽっきー」

「うさぎさん、ふかふかーv」

「みにかー。しゃぼんだまー」

「あとで、みんなでシャボン玉吹こうね。いい天気だし、綺麗だよー」

「かげときどの、ありがとうございます。うさぎさん、かわいい」

「それが一番おっきい景品だったものね。取れて良かったよ」

「ありがとな、かげとき。おかげでおやついっぱいだ」

「ひのくんはそれで良かったの? おやつばっかりねだってたけど」

「おう。ひじょうしょくはじょうびしとかないとたいへんだからな。ぽっきーはでかいからかげときにもやる」

「… さすが、抜け目無いね」

「べんけーのちぇっくがきびしいから、なかなかためておけないんだ」

「ふふ。でも、その分歯磨きしなきゃね」

「あのおっさんみたいなこというなよ。せっかくみなおしたのに」

「あ… あはははは」

「あ、あつのうさぎりゅっくになってる。そこにいれよーぜ」

「うん」

 流石ヒノエくんの分身だよねー、と感心しながら、景時は足元でてきぱきとおやつを隠すひのと、その意図をいまいち計りかねつつ協力しているあつとを見詰めた。
満開の桜は零れんばかり、風も心地好く、絶好のお花見日和だ。そんな中、戦時中でも無いのに、こんな性根たくましい幼児は他に居ないだろう、としみじみしてしまう。

「うーん… 弁慶とのやりとりで、自然とたくましくなっちゃうのかなー」

「僕の所為にされても困りますよ」

 ぽつりと呟いた独り言に、不意に、きっぱりと返事が返される。
驚いて振り向いてみれば、そこには笑顔の策士、もとい軍師が居る訳で。

「景時。あまり二人を甘やかしすぎないで下さいね」

「わかってはいるんだけどね〜、可愛いんだもん」

「ま、今回は君の顔を立てて、知らないフリをしておきましょう」

「ありがと、弁慶。ところで、他の皆は?」

「なかなか面白いことになっていますよ」

 にっこりと深みを増した唇に、景時は瞬時、ロクでもないことになっているだろう仲間を察知した。
 出来るならば、行きたくない。かわいいかわいいちびっ子二人と、のんびり花見を楽しみたい。でも、それが決して叶わないだろう事を、景時は身を持って知っていた。

「あ、べんけいどの。みてください、かげときどのがとってくださったのです」

「げ! おっさん」

「これはこれは、可愛らしい兎のリュックですね」

「はい」

「でも、少し重たいかもしれませんね。僕が持ってあげましょうか?」

「いらねーよ! おれがもつからおっさんはあつにさわんなっ!」

「ほんと、こういう所まですっかりヒノエに似てしまって… じゃあ、君に触りましょうね」

 ぐーりぐり と、そのクセの強い髪の毛を強めに撫ぜて、そのまま、弁慶は ひょい とひのを自分の胸に抱きかかえてしまった<。慌てるひのに、けれど弁慶は笑みを崩さぬまま、だっこの体制に入ってしまう。

「少し歩き疲れたでしょうから、だっこしてあげましょうね。桜も良く見えますよ?」

「だーっ! はなせおっさんっ」

「あつくんも、景時に肩車でもしてもらうといいですよ。折角の桜ですから、楽しまないと」

「… あ、でも…」

「いいよ。遠慮しないで、おいで? あつくん」

「… … いいのですか?」

「もちろん。あつくんが嫌じゃなかったら、だけど」

 目線を合わせて微笑むと、小さな身体が ぴょん と飛びついてきて。景時は横で叫びまくっているひのが後で報復してくるだろう事に冷や汗をかきつつ、期待と不安で目をきらきらさせているあつを、ひょい と肩に担ぎこんだ。

「わ…ぁ」

「頭にしっかり掴まってね。怖くない?」

「だいじょうぶです… すごい… さくらがこんなにちかい」

 あつの小さな手のひらが、眼前まで迫った桜の花びらにそっと触れる。
 ひんやりとした柔らかな感触に、その頬が薄紅色に染まって。よくは見えないが、きっと、とても可愛らしい、満面の笑みで桜を愛でているのだろう。
 少なくとも、弁慶の腕の中でもがき暴れていたひのが、ぴたりと動きを止めてしまうくらいには。

「… べんけー … おれも、かたぐるま」

「おやおや。いいですけれど、髪の毛を引っ張ったり、肩を蹴ったりは無しですよ?」

「しねーよ」

 むっすりと、けれどしおらしくなったひのに、弁慶はくすりと笑うと、同じようにひのをその肩に担ぎ上げた。
 リュックの分、更に重たくはあるが、まあ、よしとしてあげよう。

「あ、ひのー」

「… きれいだな」

「うん。さくら、すごくきれい」

「あつ… あの、な、そうじゃなくて」

「ひの?」

「… えと … なんでもない」

「?」

 さわさわと、風に花びらが揺れる。
 まるで手鞠のように、優しく揺れては、その色彩を青空に照らす。

「… ひのくん、本気になると奥手なのかな? もしかして」

「可愛いでしょう?」

「そうだね」

 そして。小さな恋人たちを肩に、景時と弁慶は、花回廊の中をゆっくり、ゆっくりと歩き出した。




 それは、愉快なのか何なのか、もはや判別がつけられない状態にあった。

「はあっ! やっ!」

「まだだ」

「たあっ!」

 いつの間にか、そこは立派な見世物と化していた。いや、当人達は至って真面目なんだろうが。
 ちょうどよく設えられていた舞台小屋に、二人はすっぽりとはまっていた。まさに火花散る、正真正銘の剣稽古である。そしてそのまん前では、残りの面子が一杯やりつつ、それをやんややんやと守り立てている。

「腹ごなしに、九郎が鍛錬をすると言い出しまして… それに付き合ったあたり、リズ先生もそれなりに酔っていたんでしょうね」

「おー。くろーとせんせー、ほんきだなー」

「はやーい」

 刃と刃のぶつかり合う音が、なんとも生々しい。それが観客達の注目を更に集めているのだろうけれど、何もこんな所で本格的にやらなくたって と、景時はがっくり肩を落とした。

「あれ、あつもりいねーぞ」

「… ひのえもだ … どこいっちゃったんだろう?」

「あの二人でしたら、さっさとデートに行きましたよ」

「なんだよー。いくじほうきだなー」

「本当にねえ… さ、ひのにあつくん、ちょっと手伝ってくださいね」

「え… 弁慶、手伝うって…」

「見世物ですからね、集金しないと。この分ですといい感じに稼げますよ」

「えー!?」

「今日は皆で焼肉にしましょうね。九郎と先生にたっぷり精をつけてあげたいですから」

「おー、やきにくーv」

「… あつ、にく、にがて…」

「ケーキとフルーツのバイキングがある所にしましょうか。それならいいでしょう?」

「けーきv」

「じゃあ二人とも、元気よく声をかけるんですよ」

「はーい」

「はーい」

「…って、ちょっと、弁慶」

「育児だなんだと追われてる身としては、飲み足りないんですよねー。夜も宴会です。なんでしたら、君も大道芸やってくれて構いませんよ」

「… … えー (汗)」




「りずせんせーのうえが、いちばんたかいなー」

「これならひのといっしょだ」

 夕焼け雲を眺めながら、ひのとあつは一緒に 『一番高い所』 に腰を落ち着けていた。
 肩車がすっかり気に入った二人の場所。そう、リズヴァーンの肩、である。

「… 二人とも、あまり動いては先生にご迷惑が…」

「問題無い。このくらい、どうという事も無い」

「しかし… お疲れの所にこのような」

「心配は要らない。まだ、お前が一人増えても平気なくらいだ」

「は…?」

「それは却下。センセー、あれだけ汗かいたのにまだ酔ってんのかよ」

「ヒノエ! 先生になんて御無礼な」

 二人きりでちゃっかりお花見デートを楽しんだヒノエと敦盛も無事戻り、次は焼肉パーティーである。軍資金も見事に集まり、まだまだ花の宵は楽しめそうだ。

「かげときどの、どうかしたのですか?」

「ううん、何でもないよ」

「あつがいっぱいかたぐるましてもらったから…」

「違うよ。ほら、さっきいっぱい手品やっちゃったから」

「さんしょううおさん、かわいかったです。またみせてくださいね」

「うん… そだね。はは…」

 結局。九郎と先生の太刀稽古で始まり、景時の陰陽術、あげく、 「いつも世話になってばかりだから」 と、戻った敦盛までもが笛を披露し、一行はすっかり有名人になって帰路についたのであった。
所変わればなんとやら。あんなに戦の為に磨いた技術が、ここでは大道芸なのだから、ちょっと気落ちしてしまう。
 けれど… それは、もしかしたらとても嬉しい事なのかもしれなくて。景時は多少疲れの入り混じった身体を、一回思い切り背伸びさせた。
 陰陽術も、銃の腕も、ここではこんなに平和に、みんなの笑顔の為に扱える。それはきっと、とても素敵なことなのだ。

「… あ。せんせー、ちょっとだけおろしてください」

「どうした?」

「すぐもどります」

「あつ、ひとりでいくなよ、あぶないぞー」

 とっ とリズヴァーンの肩から下りたあつが、とたとたと人もまばらになりつつある屋台の方へと駆けて行く。ひのも慌ててその後を追い、そして残された大人の面々は、決して視線を二人から外す事無く、ほんの少し、その帰りを待った。
 しばらくして、あつとひのが同じように駆け足で戻ってくる。
 その手には、赤い、赤い夕日のような色が三つ。

「かげときどの、はい」

「え? 俺に?」

「いちごあめです。きょうのおれいに」

「あまいもんはつかれにいいからなー。えんりょなくもらっていいぞ」

「あつくん… ひのくん…」

「べんけいどのも、はい。これ、ひのから」

「おや。肩車のお礼ですか」

「… もらったこずかいあまったから、ついでだ、ついで」

「ふふ。ありがとう、ひの。あつくんも、ありがとうございます」

「ぎゃーっ! ちゅーしてくんなっ!」

 最後に、二人してとてとてと。
 両手で必死に飴を掲げてくるあつと、ごしごしと頬を擦りながら寄ってくるひのに、リズヴァーンは屈み込んで、二人の言葉を待った。

「… 私にも、か?」

「はい。せんせーも、かたぐるましてくれたから」

「かえりもたのむな、せんせー」

「大分、大きいな」

「りんごあめです。ふたりぶんだから」

「そうか」

「せんせー。あと、おれにもたんれんつけてくれな。ひのえよりつよくなりたい」

「わかった。さ、二人とも、気をつけて肩に乗りなさい」

「はーい」





 花の房を手で弾きながら、目の前で子供たちが二人、楽しそうに笑っている。
 そこからふわりと、不意に上がる、虹色の珠。
 空に向ってふわふわと。不思議な泡の群がたくさん、夕日に染まってのぼっていく。

「わぁ…」

 夕暮れを飾るシャボン玉に、皆の感嘆の声が上がる。
 幻想的な景色を前に、景時は子供たちからの贈り物を、ぺろりと口にしてみた。甘すぎるくらいのそれは、けれどこころにとても心地好くて。
 今日は、ちょっとはみんなの役に立てたのかな なんて、くすぐったく思ってみる。

「かげときどのも、ふいてください」

「いいの?」

「いっしょにふこうっていったじゃん」

「はいはい。じゃ、やってみようかな〜」

 危ういバランスで差し出してくる身体をそっと抑えつつ、その小さな手から、シャボンの容器を受け取る。
 ふうっ と吹くと、それは夕陽に染まり始めた桜の群を越えて、遠く、遠くへのぼっていった。


 ああ、いい日だな、と、景時は視線の先の夕陽に、そう思った。



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すっごくすっごくわがままを言って、紗良がキリリクをいただいてきました!!!
いろいろわがまま言ってすみませんでした〜!!!

紗良