母 帰る  











  「そうですか…。『潮時』と言ったのですね」



  「ああ、すまん。まさか、出て行ったまま、戻って来ないとは思わなかったので」



  「そうでしょうね」



  「俺のせいだ。すまん、弁慶。探してくる」



  「おやめなさい、九郎」



  「し、しかし…」



  「知盛殿とて、よくよく考えての事でしょうからね。

   そう簡単には見つからないでしょう。

   ま、見つけたところで彼の性格ですから、戻ってくるとは思えませんね」



  「そうなのか?」



  「ええ」



  「…しかし、どこへ行ったのだろうな……知盛の奴…」



  「……さぁ……」



  「腹を減らしてなければいいのだが…」



  「そうですね」















  「この……クロダイは、実に……美味…だな」



  「これも」



  「これ……は……?」



  「頂き物だ。『すぐき』と『千枚漬け』という、京の食べ物だそうだ」



  「ほぅ……京の……」



と知盛は、千枚漬けを一口食べ



  「何やら……懐かしい味がする……」



  「うむ……実に、美味だ」



  「ククク、鬼も……みやこが恋しいと……みえるな……」



  「……フ……」



  「何……か……?」



  「……いや……、ただ」



  「『ただ』……?」



  「『も』…かと、思ったまでのこと」



  「ククク…、……『ほぉむしっく』と……言うのだそうな」











09/01/12 UP
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