知盛……、拾えよ 1
望美が七里ヶ浜で異世界から来た知盛を拾ってきてから数時間が経った。
望美の奴は「あ、そろそろ夕飯の時間だから帰るね、じゃ」とか、ぬかして帰っていっちまった。
「さてと、じゃ風呂にでもするか」
「……ふろ?」
「知盛、先に入るか?」
「ほお…、この邸には……蒸し風呂があるのか、ククク……豪勢だな」
「スチーム・バスじゃ無ぇからな」
「兄さん、知盛に風呂の使い方、説明しておいてくれよな。八葉の時もさんざんだったんだからな]
「俺が? 何でだよ?」
「腹違いの弟さん、なんだろう」
そう言って譲はキッチンに行ってしまった。
「え? あ! おい! ……ったく」
と知盛をバスルームに連れて行く。
「……湯気が……ない」
「だから蒸し風呂じゃ無ぇって言ったろう」
「ほう、……湯殿なのか、…それはそれは……」
「で、これが蛇口」
「じゃぐち?」
「ああ、左側をひねると湯が出る、右をひねると水が出る」
「…ほお」
「で、こいつで身体を泡立てて洗う。ボディーソープだ」
「ぼでぃそぉぷ…、……どうして泡立てるのだ?」
「どうして? そうだな……。どうしても、だ。
で、かけ湯をして湯船に入る」
「着ているものは……どうする?」
「ここに入る前に、全部脱ぐんだよ」
「ほお」
知盛は脱衣所で両手を広げたまま動こうとしない。
「?」
「……?」
「お前、何、やってんだ?」
「……誰が…脱がせるんだ?」
「自分で脱げよ! ここには女房も乳母も居ねぇんだからな」
「面倒だな」
平安時代は風呂といえば蒸し風呂のことで、天然の温泉はあったでしょうが
浴槽にお湯を張り、そこに体を浸かるという入浴方法が一般化したのは江戸時代に入ってかららしいです。
知盛は超が付くほどの上流階級の育ちなので、当然、服の脱ぎ着は傍に伺候する女官がやっていました。
将臣は、知盛が慣れるまで、知盛の女官代わり? 頑張れ、兄上!