知盛……、拾えよ 4
「ぐっどもぉにんぐ……、まい…、ぶらざぁ」
「知盛、朝っぱらから、驚かすなよ!」
「あいむ、ふぁいん……、せんきゅぅ」
「どこでそんな言葉覚えたんだ?」
「毎朝……、卯の時頃になると……あの箱から決まって……聞こえてくるのでな……」
「あの箱? ああ、ラジオか……ってお前、毎朝ラジオで基礎英語なんか聞いてるのか?」
「いぇす……」
「へぇ、兄さんより発音、巧いんじゃないか」
「おいおい聞き捨てならねぇ事、言うじゃねぇか、譲」
「だって本当のことだからな」
「OK、じゃあどっちの発音が巧いのか、ネイティブに確認してもらおうじゃねぇか」
「兄さん、どうするつもりなんだ?」
「朝っぱらでも、鶴岡の段葛にでも行きゃぁ外人観光客の1人や2人いるだろうからな
そいつらにどっちの発音が通じるか、勝負だ」
「……ク、すぐムキになるのが……還内府殿の……悪い癖だ……」
「行くぞ! 知盛!」
「あ! 朝飯は!? あと40分で学校始まるんだぞ、兄さん!」
「弁当にでもして学校に持って来い!」
「自分でやれよ」
「うるせぇ! 焚きつけたのはお前だからな、譲! 学校で待ってろ!」
そして1時間目の休み時間
「あ、いたいた、将臣君。譲君が朝とお昼のお弁当2つも持って来てくれたよ」
「うるせぇ、そんな気分じゃ無ぇんだよ……」
「へぇ、あんな大口叩いた割に、兄さん、知盛に負けたんだ」
「『負けた』って何のこと?」
「望美には関係無ぇだろ!」
「先輩、兄さんは」
「譲!」
「知盛と、どっちの英語の発音が外人に通じるか、今朝わざわざ段葛まで行って試して来たんです」
「で、知盛に負けたんだ……って、え〜〜!? 知盛って英語、話せるの???」
「はろぅ えぶりばでぃ、うぇるかむ つぅ きそ・えいご・わん。
……ククク、何事も……基礎が大事……ということだ……な」