帰らないの? 九郎さんルート・9月

〜 SASUGA特別編 ・ 1 〜










  さあ、緑丘スタジオ・屋外特設ステージも夜の帳に包まれました。
  その漆黒の闇の中に照明を浴びて浮かび上がるのは、
  最終関門「ニュー・タワーリング・インフェルノ」!!
  前回大会、三度目の征服によって「タワーリング・インフェルノ」は陥落。
  今回の27回大会からリニューアルされたニュー「タワーリング・インフェルノ」!


  旧「タワーリング・インフェルノ」よりも遙かに難易度を増した凶暴にして至高の高み!!
  ニューバージョンの「タワーリング・インフェルノ」ですが
  その麓に辿り着いたのはたった一人だ!!


  今回も、この最終関門までに99人の挑戦者が、
  どこかの関門の餌食となって無念の涙を飲んでいる!
  その99人の無念と期待を一身に背負い、たった1人の挑戦者が
  今、タワーの麓に歩を進めた。


  たった1人のその男、胸には輝く黄金の100番!!
  第26回大会の覇者!
  『SASUGA』3人目の完全制覇者!!


  「『SASUGA』によってこの世界での生き方が変わった」と、そう本人も言っています!
  そうでしょう
  『SASUGA』の前は住所不定・家出中のフリーター
  それが!
  あの頂の赤いボタンを押した瞬間から始まったサクセス・ストーリー
  わずか半年の間に
  2代目・体操のお兄さんとしてちびっ子の人気者!
  他局ながら戦隊ヒーローモノのレッド! 驚愕の視聴率!
  あのジャン・ウー監督が熱烈ラブコール! ハリウッドにも進出することが決まった!!
  我らが九郎!
  九郎・源だ!!






  地下足袋を脱ぎ、ゆっくりとタオルで身体中の汗を拭き取ります。
  タオルを渡したのは、SASUGAオールスターズの船長、永野だ。
  2人目の『SASUGA』制覇者が、3人目の制覇者にして初の連覇の偉業を目前にした男に
  力水を与えるのにも似た光景!
  絵になるシーンです!!
  そして、ゆっくりとそして丁寧にタオルを永野に返す源。
  なんと丁寧にして折り目正しいんだ、この男は!


  さあ、ゆっくりと手に滑り止めの粉を入念につける。
  その間にスタッフが九郎の身体にハーネスを固定する。
  担当者がハーネスに異常の無いことを確認しております。


  OKのサインがでました! ハーネスその他、安全装置の確認が完了しました!
  スタッフが彼の傍を離れます。
  SASUGAオールスターズ、その他の競技参加者も
  一言何か言っては、彼の身体をポンポンと叩いて離れていきます!
  最後に、船長・永野が何かを言っている。


   「文吾が、ガンバレってよ」


   「城鳥さんが……」


前回は怪我で、今回は膝の手術で、結局は欠場した城鳥文吾の顔を
九郎は思い描いた。


   「お前、緊張してるのか? ガラじゃ無ぇんじゃねぇか?」


   「これが『ぷれしゃー』というのものなのだろうか?」


   「それを言うなら『プレッシャー』だろ?」


   「ああ、その『ぷれじゃー』だ」


   「お前……、ま、そんな冗談が言えるんじゃ、大丈夫だろうな」


   「いや、冗談では…」


   「分かった分かった。ま、思いっきりいけ、悔いだけは残さないようにな」


   「分かった」


   「勝ったら、飯、奢れよ!」


   「…え? 俺が?」


   「ハハハ!」


  ポンと一度、源九郎の頭を小突くようにして笑いながら
  今、永野が離れた。
  応援団の声援がいっそう大きくなる!!
  源九郎がその応援団の方を向いた


   「九郎さ〜〜ん!! 頑張って!!!」


   「ファイトォ!! 勝ったら飯奢れよ!!」


   「九郎殿〜〜!」


   「朔。君がそんなに興奮するなんて珍しいな」


   「譲殿…」


   「いいさ。さ、いっしょに応援しよう。九郎さん!」


   「ええ。 九郎殿ぉ!」


  おぉ〜っと! 源九郎が観客席を見つめる。


   (九郎……、落ちついて)

声に出さずとも、師が何を言わんとしているのかは
視線を交わせば、九郎には十分すぎるほどに解った。

   「はい! 先生!」


  そして大きく頷いた!!


  さあ、意を決したように上を向きました、源九郎!
  目を凝らして、ジッと上を見つめています!
  遙か上を、30m上空の頂を! その頂点にある、あの赤いボタンを!
  今、源九郎はイメージしていることでしょう!!


  大きく息を吸って


  さあ! 垂直の壁!! 15mの垂直スパイダー・クライムだ!
  前回までの12.5mから、2.5m高く、長くなったスパイダー・クライム!
  しかし源九郎はテンポ良く登っていく!


  しかも今回から、この垂直の壁は、登り始めてから10秒後には
  ゆっくりと左右の壁が離れていく仕掛けになっているのです!!
  刻々と時間が過ぎていきます!


  間もなく5秒!


  しかし凄いぞ 源九郎!
  ここまでの3ステージ分の疲れなど、少しも見せず、テンポ良く登っていきます!
  6!

  7!

  8!!



  8秒だ! 8秒でこの垂直の壁を制覇してしまった源九郎!!


  この男の腕に乳酸は蓄積されないのか!!


  さあ、すかさずロープを手にした!!
  休む間もなく15mの綱登りが始まった!!


   「九郎さ〜〜ん!! 頑張って!!!」


   「いけ〜〜! ガンバレェ〜〜! 九郎ぉ〜〜!!」


  このロープに手をかけてから15秒経つとタイムアウト!!
  容赦無くロープは切断され失格となるのです!!


  この30m先の頂に30秒以内に達することができるのか!!










   「ここで、またこうして勝者となることができたのはリz」


   「やったね!! 九郎さぁ〜〜ん!」


   「ナイスファイト! 九郎!!」


   「いや〜〜〜♪ 凄い凄い!」


   「九郎殿! おめでとうございます」


   「九郎 やったじゃん!」


八葉や神子達が優勝者インタビューを無視して駆け寄る。
その向こうには


   「やるな、源君」


   「すっご〜い! 亜紀、感動ぉ〜〜」


とタオ・ブラック役の元ブンデスリーガー、黒崎隼人とタオ・ピンク役の星野亜紀が、
さらには『SASUGA』オールスターズの面々や、今回の『SASUGA』参加者がどっと集まって
源九郎の『SASUGA』2連覇という快挙を祝福し、
あっという間に揉みくちゃになり、そして、九郎の胴上げが始まった。


エンディング曲のカットイン
エンド・ロール
ゆっくりと九郎の胴上げシーンから、TBB緑丘の『SASUGA』セットの俯瞰となり
番組は終了した。










翌朝……






   「この優勝トロフェーと副賞の賞金はお返しする!!」


   「まあまあ、落ちついて! ね! 源君!!」


   「しかし! 俺は真の勝者ではない!」


   「だから! ね! 誰か『SASUGA』のディレクターを呼びなさい!」


   「それから彼のマネージャーも!」


   「それにしても、昨夜だろう? 『SASUGA』の収録が終わったのは!?」


   「そこで君は『SASUGA』史上初の連覇を達成したばかりじゃないのかね?」


   「それが何で今朝になって『お返しする』って事になるんだね?」


   「それは」












09/03/29 UP

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