『さんたさん』を探して









          この話は「過去拍手ログ4・クリスマス編・3」の翌朝の話を前提としています。
                知盛が望美に拾われて、まだ1ヶ月位の頃になります。










「きのうはリズ先生のサンタさんに驚かされたよな」


書道教室では、昨夜のリズ先生サンタが自分の枕元に突然現れては消えたことで盛り上がっていた。


  「オレ、気が付かなかった」


  「私も」


  「オレ、本物サンタさんとリズ先生サンタさん、両方からプレゼントもらったぜ」


  「俺も」


  「ガキね、サンタさんはね、プレゼントをくれるんじゃなくて、願い事を叶えてくれるんだから」


  「知ってるよ、そんなこと。だからゲームソフトが欲しいって願いが」


  「あ〜あ、即物的。だからガキって言ったのよ。それにね、ホントはサンタさんって」


そこに、いつもぼんやり書道をする子供を眺めているだけの知盛が、言葉を差し挟んだ。


  「……おい」


  「何だよ、とののり」


  「……『さんたさん』とは……何だ??」


  「へ? マジ??」


  「とももりだって、子供の頃にはサンタさん、来ただろう?」


  「……知らんな……」


  「ウソだろ」


  「……マジ…だが、何か」


  「とののり、お前…」


  「やっぱり知盛さんは悪い子だったんだ」


  「なんでそうなるんだよ! お前、とももりの事、勝手に決めつけんなよな」


  「だって、サンタさんは良い子の所へ来るって、お母さんも……。歌でもそう云ってるもん!」


  「……よい子の味方で、……願い言をなんでも叶える………リズヴァーンすらマネする『さんたさん』……。
   ククク、さぞかし楽しませてくれるのだろうな……一手…、…試合うてみたい……ものだ……」










着信音がする。


  「はい、九郎だ」


  『お前……、本物の《さんたさん》が……どこにいるか知っている……か?』


  「おお、知盛か、珍しいな。で、《さんたさん》? 何だ、それは?」


  『お前のところには……来なかったのか?』


  「誰が? その《さんた》某がか?」


  『ああ…』


  「来るわけがないだろう。どうしてだ?」


  『リズヴァーンが……その……《さんたさん》に扮し……、
   昨夜、よい子のところを……尋ねて回っていた……という話だったのでな……』


  「え! それは本当の」


通話が切れる


  「とも? え? あれ? おいっ、知盛?
   何故、俺のところにはお出で下さらなかったのですか!! 先生〜〜!!」










着信音がする。


  「おや? 知盛君からとは珍しいですね。はい、藤原です」


  『…薬師殿に……ひとつ……聞きたい』


  「はい? 何でしょう」


  『本物の……《さんたさん》がどこにいるか……知っているか……?』


  「サンタクロース、ですか」


  『《さんたくろす》……? ほお……、それが……奴の本名なのか?……』


  「え? ええ、そう聞いていますが」


  『……で? ……どこにいる?……』


  「さあ、残念ですが」


  『……』


  「ああ、ひょっとするとヒノエなら知っているかもしれませんね」


  『ほお……、熊野の……頭領殿か……』


  「ええ、あの子は、そういう知識は妙に詳しいですからね」


通話が切れる


  「あの子ヒノエが、何と知盛君に説明するか、楽しみですね」










着信音がする。


  「へえ、新中納言がオレに何の用だい?」


  『本物の……《さんたさん》がどこにいるか……知っているか……?』


  「《本物》限定かい?」


  『そうだ』


  「そいつは残念だが知らないね。たぶん、日ノ本の国には居ないんじゃない」


  『……何故だ…!?』


  「何故って…、そうだね、サンタクロースは普段グリーンランドという国に住んでいるって話だからね」


  『ぐりいん……らんど?』


  「そして年に1度、クリスマスの日に世界中のよい子にプレゼントという贈り物を配るんじゃん」


  『……ああ、その話は……知っている…』


  「へえ、意外と物知りだね」


  『よい子……か』










着信音がする。


  「と、知盛殿。ご無沙汰しております」


  『……大夫殿は…よい子か?』


  「え? そ、それはいったい、どのような……」


  『《くりすます・ぷれぜんと》は……《さんたさん》から頂けたのか……な?』


  「え? どうして、それを」


  『やはりな……、ククク。…で、《さんたさん》には……会えたのか?』


  「いえ……
   (サンタでは無く、私の枕元に来たのはヒノエで……、私は寝たふりをしていたのだが…。
    しかし、このことを言ってもよいものなのだろうか)
   申し訳ないが…」


  『そうか……』










譲が、買ってきた大量の食材を冷蔵庫や野菜ストッカーに詰め込んでいる。
そこに音もなく忍び寄る影が1つ。


  「……譲」


  「うわぁ!!」


手の持った卵のパックを落としそうになり、辛うじて抱えこんで事無きを得た譲は
胸に卵10個1パック99円を抱えたまま振り返って、声をかけてきた相手に抗議した。


  「と、知盛か…。何度も言うけど、こっちの世界では気配を消すなって! 驚くだろう」


  「別に…驚かすつもりは無かった……が、な…」


  「で、何? お前が俺の名前を呼ぶときは、どうせろくな事じゃないだろうけどな」


  「譲は……よい子か…?」


  「は? ハハハ、な、何を言い出すんだ?」


  「『さんたさん』に……会えないのは、悪い子だから…なのか?」


  「?? はぁ?」


  「……どこに行けば、…本物の……『さんたさん』に会えるのだ?」


  「ほ、本物の……?」


  「……本物の『さんたさん』は……強いのだろうな……」


一瞬、目眩がする。
何かがずれている。いや、何かが違う。


  「強い??」


いろいろな疑問が譲の頭の中をグルグル渦巻いて、何をどう言ったらいいものか考えがまとまらなかった。


  「お前、根本的に間違ってるから」


  「…それらしい恰好なりを……した奴2、3人に、尋ねたのだが……な」


  「それらしい恰好なり?」


  「赤い……三角な帽子を被った……」


  「で? 何て尋ねたんだ?」


  「お前は……本物の『さんたさん』か?…と」


  「絶対、はいそうですって言うわけないだろう」


  「ああ。……で? だから……、どこに行けば」


  「知らないよ。俺が知ってるわけないじゃないか」


  「……」


  「そうだな……(面倒だな。これから料理を作るのに)そういうことは……
   か、景時さんなら……多分、知ってるんじゃないかな」


  「……平三……か、ククク……なるほど、……サンキュ、有川弟……」


  「(きょ、今日は朔は先輩と買い物に行ってるはずだから……。景時さん、ゴメン)」










店じまいをした厨房で、景時はサンタの帽子に赤いサンタ服まで御丁寧に着て、鼻歌まじりで食器を洗っていた。


  「真っ赤なおっはっなっのぉ〜〜♪ ジングルベ〜〜ル、ジングルベ〜〜ル♪ 雨は夜更け過ぎに〜〜♪」


  「……御機嫌だな、平三……」


  「あれ〜〜、知盛くん〜、どしたのかな〜〜??」


  「…ほう、おまえも『さんたさん』……か」


  「そっだよ〜〜」


すっと景時に近寄り、知盛が凄む


  「では、戦え……」


  「え? え?? え〜〜! だ、だ、誰と??」


  「……このオレと」


  「何で? 何で〜? 何で〜〜??」


  「有川弟の言う通りだったな……ククク、…『さんたさん』は平三に聞けと…な」


  「譲君〜〜!」


景時は、ここ数日、譲に気に障ることを自分がしただろうかと考えたが、


  「アハハ〜〜、有り過ぎて、どれだか分かんないや〜〜。朔〜〜、今日がお兄ちゃんの命日になるかも〜〜」


  「……では」


  「ちょ、ちょっと待って〜!」


  「……何か?」


  「ま、まだ、オレ、サンタさんになってないからさ〜〜」


  「ほお……、『さんたさん』とは……『なる』……ものだったのか……」


  「でもね〜〜、体重が足りなくてさ〜〜〜って、え? だって、だから来たんじゃなかったの〜〜?」


  「平三……」


  「な、何かな〜〜?」


  「俺は……よい子…か?」


  「え? え?? え〜〜〜!」


強烈な一撃であった。










  「おい、譲」


  「なんだよ、兄さん。今、洗い物で手が離せないんだ」


  「いいから、来いよ」


  「何?」


  「ちょっとすごいモノを見せてやるから」


  「だからなんだよ」


そう言いながら、知盛の部屋に連れて行かれる。


  「ここ、知盛の部屋じゃないか」


  「しぃ〜 いいか」


と扉を少し開くと
そこには、枕元に靴下を吊し、期待に胸をふくらませて座る知盛の姿があった。
笑いをこらえながら、扉を閉めて将臣が言う。


  「ミスマッチ、だろ」


  「それより26日きょうはもうサンタクロースが来ないって教えてやった方がいいんじゃないか?」










後日談1


  「兄上、この横文字の手紙の束は、いったいなんですか?」


  「『グリーンランド国際サンタクロース協会』との往復書簡だよ〜〜。
   本物のサンタクロースになろうと思ってさ〜」


  「本物の??」


  「正しくはね〜〜『公認サンタクロース』。でも体重制限でダメだったのさ〜」


  「え! 兄上は多少こちらの世界に来てふくよかになったとはいえ、まだそれほど太っては」


  「逆なんだよ〜〜。体重は100kg以上ないとサンタに認定してもらえないんだよ〜〜」


  「そんな、100kg以上など……」


  「その上で、煙突早登りや、山盛りのミルクとお菓子の早食いや、サンタ式の発声なんて項目の
   試験があってね〜。4日間、現地で試験を受けて、
   最後に、450歳の長老サンタクロースと面接もあるんだからね〜〜
   欲しかったな〜〜。公認サンタの認定証。あ〜あ、体重、なんで100kg無いんだろう」


  「やめてくださいね、そんなメタボな兄上、想像したくありませんから」










後日談2


2日ほど部屋から出てこない知盛を不憫に思った将臣は、
3日目の夜半、知盛の部屋に忍び込み、靴下に日本酒の小瓶を入れようと


その瞬間、首筋に冷たいモノが当たるのを感じ、動きを止めた。


  「ほお……、将臣も……『さんたさん』だったのか……。盲点……だったな……」


  「ち、ちがうから……、落ち着け…」


その夜、将臣の叫び声が町内にこだましたという。


  「兄さん、近所迷惑だろう! 知盛も兄さんとじゃれてるんじゃない! ったく、2人とも子供なんだから」










後日談3


  「鬱陶しいですね、いつまでもグジグジと」


  「し、しかしだな、弁慶」


  「そんなにリズ先生のサンタが来なかったことがショックですか?」


  「そ、それは……だってだな」


  「いいですか、九郎。
   1つ、『サンタクロースはよい子のところに訪れる』
   2つ、『リズ先生サンタは九郎のところに来なかった』
   3つ、『九郎はよい子ではない』
   こう、簡潔に三段論法が成り立つじゃないですか」


  「ガ〜〜〜ン!!」


以降、1ヶ月は立ち直れない九郎であった。










09/12/27 UP