遙かなる時空ときの彼方へ 3.5

     シャニと足往の大冒険! 3











ププッ〜!



どことなく長閑なクラクションを鳴らして、ミニバンがdragon noirの駐車場に入って来た。

なにしろ動いている自動車を間近で見たこと自体が初めての人々は、この上もなく好奇の眼で見つめた。



運転席のドアが開き、降り立ったのは



  「弁慶〜♪」

  「弁慶殿」



  「ほお、凄いな」



  「いったい何処で借りてきたんだろう?」







店の扉のカウベルが軽やかに鳴り、弁慶が入ってきた。



  「やあ、お久しぶりですね。アシュヴィン殿下」



  「ああ、あの時は世話になった」



  「また今日は随分と大勢でお越しなのですね。

   7人乗りを借りてきたのですが、どうやらこれでも乗り切れないみたいですね。

   困ったな……」



  「車で来たってことは、どこかに行くつもりなんですか、弁慶さん?」



  「ええ、譲君。是非あちらの世界の皆さんをお連れしたい場所がありましてね」



  「ほお、わざわざ乗り物まで用意して連れて行こうとは、存外お前も太っ腹なのだな」



  「存外とは心外ですね」



  「どこに連れて行ってくれるの?」



  「この国最大のアトラクション・リゾート」



  「あとらくしょんりぞーと? 何だ、それは??」



  「え!? ああ…」



  「どうやら朔殿はお分かりになったようですね」



  「ええ。でも…、あそこには望美と一緒に行こうって約束して…」



  「大丈夫ですよ、朔殿」



  「え?」



  「こちらに来る前に、望美さんには連絡しておきましたから間もなく……ああ、噂をすれば」



全速力で駐車場を駆け抜けて来る望美の姿が見える。



  「ほお、あれがこちらの世界の龍神の神子…か」



  「正確には『白龍の神子』ですね」



  「しかも『こちらの世界』とは言い難いんじゃないですか」



  「白龍の神子…?」



けたたましくdragon noirの扉が開き、望美が飛びこんでくる。



  「ま…ハァハァ、間にあった?…ハァハァ」



  「そんなに慌てなくても、望美さんを置いて出掛けるわけ、ないじゃないですか」



  「そ、そうなんですか? ハァハァ…、あぁ、な〜んだ。

   だったらこんなにダッシュして来るんじゃなかった」



  「望美さん、こちらが『例』の世界の皆さんです。

   常世の三王子、ナーサティア殿にアシュヴィン殿、シャニ殿。

   アシュヴィン殿の副官・リブ殿。

   あちらの世界では白麒麟・こちらの世界では高校教師の風早殿。

   それから、狗奴という種族の足往殿」



  「初めまして、春日望美です」



  「いい女がまた1人」



  「わーい、『いい女』って言われた」



  「私も先程…」



  「アシュヴィンさん、誰にでもそんなこと言うんですか?」



  「フ、俺はいい女にしか『いい女』とは言わないが……サティ、来て良かっただろう」



  「な、何を言う…アシュ。お前のそういう行状こそ、二の姫に報告しないとならんな」



  「おいおい」



  「ハハハ、さすがに千尋には頭が上がらないようですね」



  「え? ということは…」



  「や、さすがは弁慶殿。察しがいいですね」



  「やはりそうでしたか。おめでとうございます」



  「弁慶さん、どういうことです?」



  「譲君、残念でしたね。

   『今度会うときは《千尋》って呼んでね』と仰っていた彼女は、アシュヴィン殿下と御結婚なさったそうですよ。フフ」



  「べ、弁慶さん…」



  「ゆ、譲殿…どういうことですか?」



  「さ、朔。何でもないよ。…弁慶さん、変に含みがあるような言い方はやめてください」



  「そんなつもりはないんですけれど。フフッ」



  「ところで、先程の話に戻っていいか?」



  「はい? どの先程でしょう? アシュヴィン殿」


  「『正確には白龍の神子』という弁慶おまえのくだりなのだが」



  「ああ、その『先程』ですか」



  「『白龍の神子』という呼び名があるということは、『黒龍の神子』という存在も?」



  「ええ、白龍の神子と黒龍の神子はお互いに対ですから」



  「あの……黒龍の神子がなにか…」



  「え? では、あなたが?」



  「『黒龍の神子』!?」



  「は、はぁ……」



  「そだよ。朔は私の対」



  「望美」



  「ホォ……有川」



  「え?」



  「お前も凄いな」



  「アシュヴィンさん、葦原さん、いや、奥様に苦労されているのは同情しますが、俺を同類にしないでください。

   俺、苦労してませんし、朔はそんなんじゃないですから」



  「ホォ、『そんなん』……?」



  「あ、いや……そ、それより、そちらの世界には黒龍の神子という存在はいないのですか?」



  「ああ、『白龍に選ばれた神子』とは言っても『白龍の』・『黒龍の』という呼び方はせぬな」



  「神子は姫様だけだぞ!」



  「アシュ、それがどうかしたのか?」



  「いや、どうしたというわけではないが…、少し気になっただけだ。

   で? その『あとらくしょんりぞーと』とやらはどうするんだ?」



  「ええ、それが…少々計算違いで……、困りましたね」



  「どうされたのですか?」



  「『あちら』からのお客様が予想より多かったものですから。

   僕が借りてきた車は7人乗りなので」



  「家の車を使ってよ〜♪ 店のロゴ、入ってるけど気にしないでしょ〜♪

   朔もお世話になるんだからさ〜」



  「え!? あ、兄上。わ、私は別に…」



  「そうだよ、朔。先輩と行っておいでよ。店は景時さんと俺で」



  「ダメダメ〜、譲君が行かなっくちゃさ〜。その代わり、朔のボディーガードはキッチリお願いするね〜」



  「景時さん…」



  「でも、私も譲殿もいなくて大丈夫ですか?」



  「大丈夫大丈夫ぅ〜〜! 何とかなるって。もう、仕込みも終わってるしね。

   ま、ケーキのデセールは諦めてもらうけどね〜、ハハハ…。

   だから心配しないで行っておいで。今までロクに休みらしい休みもなかったんだからさ〜」



  「兄上…」



  「景時、それでも問題があるんですよ」



  「あ、免許……ですか?」



  「ええ」



  「そうですね。俺、お台場の二の舞はもうコリゴリですから」



  「免許……ですか?」



  「風早さん?」



一同が注目する中、風早がポケットから厳かに取り出したのは、紛れもない免許証だった。しかもゴールドの。











09/08/09 UP

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