遙かなる時空の彼方へ 3.5
シャニと足往の大冒険! 6
【御帰還おめでとうございます。船内にお忘れ物のございませんように〜】
「はぁ、びっくりしたぁ」
「アシュヴィンさん! 絶対に危険なことは無いって、あれほど言ったのに!」
「ハハハ、有川、許せ」
「入ってすぐのモンスター・ジョーンズのCGに向かって、いきなり雷ぶっ放すなんて。
まったく! 先が思いやられる」
「まあまあ、良かったではありませんか、譲君。怪我人も無かったことですし。
さ、悠長にはしていられませんからね、次のアトラクションに急ぎましょう」
「弁慶さん……」
「でも、ホントに怪我人が無くて良かったよね」
「ええ、本当に。雷が水の中を走っていましたからね」
「まさかネィズミーランド中が停電することになるなんて!」
「でも朔、電気が5分で復旧して良かったよ」
「ええ、真っ暗な洞窟の中での5分は心許なかったわ」
「もうちょっと先だったら海賊船と街の砲台のパノラマの中だったのにね」
「もう少し手前で止まってたら、ウォーターフォールの直後で、みんなずぶ濡れでしたよ」
「あ! 後ろの船は!?」
「ギリギリ、ウォーターフォール直前で助かったみたいですよ。
船は20度以上傾いたままだったみたいですけど」
「アハハハ、御無事で何より……。
まったくもう! アシュヴィンさん! 2度としないでくださいね!」
「あ、ああ」
「や、殿下が女性からお叱りを受けるところを見るのは、お2人目ですな」
「リブ」
「もう1人って」
「ああ『譲君、今度会う時は』の彼女だわ」
「そっか、アハハ」
「先輩! さ、朔も! もう、止めて下さい」
「足往、それにしても、中、広かったね」
「うん、外の建物からは想像もできない広さだった」
「ねえ、お姉ちゃん、こういった『あとらくそん』は、あと幾つくらいあるの?」
「う〜〜ん、数えたこと無かったけど、7つのテーマエリアにそれぞれ3つか4つはあると思うから」
「少なく見積もっても21っ!!!」
「サティ、驚き方が存外ハデだな」
「い、いや……」
「す、凄いわ……。兄上が来たがっていたのも分かる…。ああ、兄上に悪いことをしてしまったわ」
「そんなことないさ、朔。ネィズミーリゾートは逃げないから」
「今度は八葉のみんなと来ようよ、ね」
「そうね…。望美、譲殿。」
「次に来た時には案内できるように、朔、しっかり観て覚えてね」
「え? ええ、そうね。望美、頑張るわ」
「まだ『ランド』だけじゃなく、『オーシャン』もあるから」
「え? 『おぉしゃん』?」
「そだよ。ネィズミーランドとネィズミーオーシャンの二つを合わせて『ネィズミーリゾート』って言うんだから」
「ここの2倍……。本当に凄いわ」
「でもお姉ちゃん、それじゃぁ、今日1日じゃぁ回りきれないんじゃないの?」
「そうだな。だから今日は特に面白そうなものに絞って回ろうと」
「さ、そう言っているうちに、次のアトラクションに着きましたよ」
「ここは?」
「ここは『ジャングル・クルージング』。密林の奥を探検に行くんだよ」
「『みつりん』?」
「お姉ちゃん、ここのお話もしてよ」
「お話? う〜〜ん、ここに何かネィズミーの話ってあったっけ?」
「さあ、……『ジャングル・ブック』って言うのがあったけど、俺は覚えてないですね」
「あ、ターザンのお友達みたいな話だ」
「何ぁんだ、分からないの? お姉ちゃん」
「ゴメンね」
「見知らぬ異境を旅して廻る、そんな気分を味わうのです」
「風早さん」
「異境って何だ?」
「足往、豊葦原の先に大陸があるのは知っていますね」
「うん」
「豊葦原よりもずっとずぅ〜〜っと広い土地なんだって忍人様が教えてくださった」
「カリガネは行ったことがあるって言ってたぞ」
「そう。その大陸の更に先にも、また別の大陸があるのです」
「え〜〜!」
「そしてそこには、まだ人が踏み入ったことのない土地がたくさんあるのです。
そこを旅する気分を味わえるのです」
「へぇ〜〜」
「でも……」
「なんですか? シャニ」
「誰も踏み入ったことのない土地なのに、どうしたらそれを模したモノが造れるんだろう。
それに、誰も行ったこと無い所のことを、これが行ったこと無い土地だって、何で、みんなは分かるんだろう」
「そ、それは……」
「ま、入ってからのお楽しみってことにしておこうよ。ね」
「うん、そうだね、お姉ちゃん」
「さぁ、足下に気を付けて。乗船は完了したかな?
では! さあ皆さん『ジャングル・クルージング』へようこそ!
私、船長のキャプテン・トミーです、よろしくぅ!!」
乗船した一般の観光客が拍手をする。
シャニ達一行も他の乗船客につられて、精一杯の拍手をする。
「やぁ、盛大な拍手をありがとうっ! 今日のクルーはノリがいいねぇ
では、これから皆さんは危険なジャングルへ、冒険の船旅に出発します」
「足往、『じゃんぐる』って何?」
「さあ??」
「いいかな、そこのちびっ子達、良く聞いてね。
この危険なジャングルから生還するために、次の3つのことを守ってください。OK?」
「せ、生還……ゴクリ…」
「は、はい! 分かった!」
あまりのシャニと足往の緊張ぶりを、一般の客が微笑ましく見つめる。
「いいお返事、ありがとう!
では、1ぉつ! 船の中では立ち上がったり、席の移動などはなさらないで下さい。
2ぁつ! 船内での飲食は絶対禁止です。守ってくださいね」
「なんで飲み食いしたらダメなんだ?」
「獣や虫が食べ物の匂いに寄ってくるからだ。ずっと前に忍人様がそう言ってた」
真面目に会話するシャニと足往の様子に、一般客はますます微笑ましいモノを感じて
船内の雰囲気は一層和やかなものとなる。
「そして3つめ! 船長の命令には、絶対服従です。分かりましたかぁ!」
「アイアイサー、キャプテン!」
「望美!」
「先輩! 恥ずかしいですよ」
「ダメダメ! こういうアトラクションはノリが大切なんだから! さぁ、みんな! 御一緒に!」
「アイアイサー、キャプテン!!」
「全員での返答、どうも! のぞみ先輩さん、ありがとう!
そうです! 彼女の言う通りノリが大事ですから、恥ずかしがらず!
僕もキャプテンやってて、こんなに和やかでノリの良いクルーは初めてです!
頑張っちゃいますからよろしく。そこのちびっ子2人も頑張ってくれたまえ!」
「はいっ!」
「分かった!」
2人の返事にドッと笑いが起こる。
「ジャングルでは何が起こるか分からないので、拳銃を用意して……。
OK! さぁ! 出っ発ぅ〜!」
「そうこうしているうちに船は雨の森へとやって参りました」
「雨の森?」
「そう、1年で400日雨が降ると言われる程、雨の多い森なのです」
「1年は365日だよね、足往」
「うん、たまに閏年はあるけどね」
「え〜、コホン、リアルな疑問をありがとう。まぁ誇張表現ということで納得してね」
「こちょうひょうげん??」
「コホン、え〜〜、さあ、右手を御覧下さい。
右手に見えますのが『ジャングルの宝石』と呼ばれる鳥、オオクチハシです」
「シャニ! 羽根が綺麗だよ!」
「サザキの羽根はボロボロだからな」
「クチバシも大きい!」
「おぉっと! 今度は左手を御覧下さい!」
そこには、川岸のキャンプ地をゴリラの群れに襲われたと思しき光景が展開していく。
テントを漁るゴリラ。横転したジープ。
探検隊一行の多くは、木の上に逃げ登っているのだった。
「これは、ジャングルで生き残る為に大切なことを我々に教えてくれているのです!」
「大切なこと?」
「そうだよ。この木に登っている中で一番下の男
彼は木の上にいる仲間を、ゴリラから守ろうとしている。
そう! ジャングルで大切なのは、仲間を助けようと思う気持ちだ」
「そうだね」
「次に木の中程に登っている数人
彼らは協力し、落ちないように励まし合っている
そう! ジャングルで、より大切なのは、どんな時でも互いに協力しあうことなんだ」
「そうか、そうだね!」
「でも、ジャングルで生き残るために1番大切なことは、
1番上に登っている、あの太った彼が教えてくれているんだ」
「え? 何?」
「何だと思う?」
「う〜〜んう〜〜ん」
「シャニ、頑張れ!」
「残念〜〜! 時間切れ。答は」
「答は?」
「逃げ足ぃ!!」
「望美!」
「アハハ、美味しい台詞を持っていかれた! そう、彼女の言うとおり。
ジャングルで一番大切なのは、何をおいても逃げ延びること。
そのための逃げ足の速さだったので〜す。
はい、ではここでキャプテンからの命令で〜す!
今『逃げ足ぃ!』と元気に答えてくれたあなた、のぞみさん」
「はい!」
「もう、美味しい台詞、先に言わないでね」
船内は大爆笑
その刹那、緊張したキャプテンの叫び声が響き渡る。
「うわぁっ!! みんな、しっかり掴まって!!」
そう言い終わる前にキャプテンは舵を大きくきり、船は急激に左に旋回した。
「はいはぁ〜〜い、オーダー確認しまぁす。
アイス珈琲が2つに、アイスミルクティーが1つ。
サンドウィッチが2つにホットドックが1つですね〜、御意〜〜
そうそうお客様ぁ、食後のデザートに、当店自慢のケーキはいかがですか〜〜♪
今日はパティシエがお休みなもので、デセール出来ない分、お安くしておきますよ〜〜」
09/09/17 UP