いざ 大運動会! in 常世
28 判定が出るまで今しばらくお待ちください!・2
「では、続きまして春日望美殿」
望美は、千尋から借りた髪飾りの花と、惟盛の烏帽子からむしり取った桜と梅の花を、九郎の髷紐で結わえた
即席の花束を、借り物の「花束」と書かれた紙と一緒に、大伴道臣に差し出した。
「『花束』、ですか」
「はい」
満面の笑みで望美は
「思ったより上手くいきました。自信作です」
と答えた。
「ニの姫様、いかがでしょうか?」
「い、いいんじゃないですか、アハハ」
「では、春日望美殿の『ごぉる』、認定されました」
またしても嵐のように歓声や拍手で、会場がどよめくのであった。
望美はすぐさま、千尋と惟盛に借りたものを返しに走った。
「千尋ちゃん、ありがとう」
「ううん、気にしないでください」
そう言いながら千尋は髪飾りをつけるのだった。
「これもつけてみる?」
と、望美は千尋に、惟盛の桜と梅を差し出した。
「え、でも……。ああ、梅も桜もちゃんと薫るんだ」
「当たり前ではないですか」
そう言って平惟盛は、千尋が手にした桜梅を脇から奪い取るのだった
「あ!? あなたは……」
「まったく、これだから東夷は嫌なのですよ。
他人から借りた物を平気で又貸ししてしまうなど」
そう言いながら、慣れた手つきで烏帽子に桜と梅を挿す惟盛であった。
「冗談ですよ、惟盛さん」
「造花なんですね。すっごくよく出来てる」
「でしょう。私の見込んだ出入りの 工、入魂の一品ですからね」
「薫までついているのがすごいですね」
「ホホホホホ、こちらの姫はさすがに王家の皇子に嫁がれただけのことはありますね。
どこぞの田舎娘とは、モノを見る目と気品が違います」
「そっかぁ、考えてみれば秋に桜も梅も咲いてなんか、ないですよね」
「考えなくても分かりそうなものですがね。
ま、気づいただけでも小娘にしては上出来です。少しは賢くなったでしょう。
それにしても、鏡、……鏡がどこぞに無いですかね」
「それなら校舎の中の階段の踊り場に」
「なんと、あの建物の階には舞殿がしつられてあるのですか??
やれやれ、鄙の民の考えることは分かりかねますが、後学のために見てきて差し上げましょうか」
そう言って、惟盛は懐から舞い扇を取り出すと、いそいそと校舎中央昇降口に消えていった。
「チチチチ」
「キィキィキィキ」
「ガッガッ!」
闇の眷属達の怒りに燃えた数百という目が、明るい陽のさす世界からの侵入者を見据えている。
「やべぇんじゃねぇか? この状況は」
「キキキ!」
右手の一体が将臣に跳びかかろうとした刹那
シャキ!
将臣の手にした携帯から、眩いストロボの光が発せられた。
「ギャ!」
闇の眷属達は慌てて物陰に身を隠した。
「へへへ。物は使いようってな。お、あった!」
そう言って、将臣は嬉しそうに足元に転がっていた桃の実を幾つか発見した。
その時、携帯の光が消えた。
「続きましては、カリガネ殿」
「…………………………………………………………………………これを」
カリガネは白龍を指差した。
「これ、とは?」
「…………………………………………………………………………それだ」
カリガネは再び白龍を、正確には白龍の喉を指差した。
「して、借り物の紙には何と書かれていたのでしょうか」
「…………………………………………………………………………『龍の鱗』」
そう言いながら、カリガネは紙を道臣に渡した。
「なるほど。では、その鱗をこちらに」
「え、これは取れない」
「ダメ! それを取っちゃ!」
「春日殿、それはどういうことでしょう?」
「白龍の喉にあるのは『逆鱗』といって、それを取ると白龍は消滅してしまうんです」
「神子」
「ニの姫、どういたしましょう」
「消滅しちゃうのは可哀想だから、OKにしましょ」
「『おぉけぃ』……認定なさったと解釈してよろしいのでしょうか」
「はい。認定です」
「カリガネ殿、『ごぉる』です」
競技場の群衆から、またも大歓声が鳴り響いた。
「あ〜あ、とうとうバッテリー切れかよ。ったく」
まだ暗闇に慣れない目を凝らして、先ほど見つけた足元の桃の実を掴もうと
勘を頼りに屈みこんで手を伸ばした瞬間
「キキ!」
数百という眷属が将臣めがけて飛びかかってきた。
「チイ!」
大刀どころか、携帯一つしか持たない将臣は、眷属達に組み伏せられ
その刹那
「や、伏せて!」
という声とほぼ同時に、黄泉比良坂を稲妻が水平に走り抜けた。
数十の眷属は稲妻によって消滅し、残りの数百はどこへともなく逃げ隠れた。
「あっぶねぇな! アシュヴィン! こっちまで感電したらどうすんだよ!」
「存外、無礼な奴だな、有川兄。助けてやった謝辞が、そんな悪態とはな」
「へいへい、ありがとよ。
だけどよ、あんた、本気で俺を助けるつもり、あったのか?」
「フッ、あれごときの雷撃に巻き込まれるような奴ならば、はなから助けんさ」
「ま、殿下にしては珍しく、一拍、間をおかれましたし」
「だからリブが叫べた」
「言ってくれるぜ。それに、もともと、こんなヤバイ処を教えたのはそっちだろう」
「で?」
「ああ、そっちはOKだ」
「『おぉけぃ』?」
「ほら、2、3個拾ったぜ」
「ほお、眷属共の襲撃と俺の雷撃を避けながらのあの一瞬に、よく拾えたものだ」
「それはそれ、これがメインのイベントだからな」
「や、では、また奴らが襲ってくる前に」
「ああ、退散するとしようか」
「OK」
「ま、では、こちらへ」
「では、次に遠夜d
「その前によぉ! 姫さんよぉ、これじゃダメなのかぁ!?」
ゴールラインの脇で、左手に何かを掲げてサザキが叫んだ。
「え? あ! サザキ! まだやっていt
千尋が言い終わらないうちに、
「それは一番最初に違うと言ったはずですよ!
しかも何度も言うようですが、それに薬効があったとしても、
葉であって『薬草』という定義からは外れるとも申し上げたはずですよ!」
と、召集ゲートに待機していた弁慶が叫んだ。
「ハァァァ〜、もう何が何やら俺様にはサァァァアァッツパリ、分からねェ!!」
そう言うとサザキは投げやりに、草や木の葉や茎や樹皮が堆く積まれた山の上に、仰向けに倒れこんだ。
「まず、草以外はすべて捨ててください! いいですか!」
「……ぁぁ」
仰向いたまま、サザキは力なく右手を挙げて合図した。
12/02/24 UP