いざ 大運動会! in 常世







第5話  諸注意!













  「最初はやっぱり」



  「2人3脚♪」



  「ね〜」



  「望美?」



  「何、朔?」



  「あなたと葦原さんは前からの知りあいなの?」



  「ううん、全ぇん然。ね」



  「はい。今日が初対面です」



  「では、何なのかしら? 初対面とは思えない、息の合い方で」



  「朔、あまり気にしない方が良い」



  「譲殿?」



  「女子高校生っていう属性が共鳴してるんだから」



  「じょしこうこうせい…?」







 「第1種目は八葉対抗2人3脚レースです!」



 「レーン紹介をしま〜す! 第1レーン、鎌倉青龍・将臣君と九郎さん」



    「『鎌倉・青龍』? 何て言い方だ」



    「将臣、本当にこんな風に足を縛ってしまうものなのか?」



    「そうだから、そんなに動くんじゃねぇよ! 九郎」



    「す、すまん、将臣。お前は経験者だ、俺に指南してくれ」



    「OK! いいか、俺の合図で1で俺は右足、お前は左足を出す」



    「ああ」



    「2で縛ってある方の足だ」



    「分かった」



    「ちょっと練習してみるぞ、1、2、1、2、1、2、1、2、OK、OK」



    「なるほど、さすがは将臣。分かりやすい指南だ」



    「1、2、1、2、1……、九郎、上出来だ。勝ちにいくぜ! 1、2、1」



    「無論だ、将臣!」







 「第2レーン、神代青龍・風早さんとアシュヴィンさぁん!」



    「まさか俺まで参加させられるとはな。存外、神子殿はわがままだ」



    「まさか千尋が君を、男性として選ぶとは思いませんでした」



    「千尋は人を見る目が確かだ、ということだ」



    「そんなふうに教育した覚えは無いのですがね」







 「第3レーン、鎌倉朱雀・ヒノエ君と弁慶さん」



    「走るどころか、歩くこともままなりませんね」


    「弁慶おっさん、歳なんだから無理すんなよ」



    「ええ、無理などしなくても君にならついていけるでしょうからね」



    「へぇ、言ってくれるね。じゃ、軽くオレに合わせて走ってくれ」



    「それにしてもヒノエ、君もなかなか大きくなりませんね」


    「!! まだまだ育ち盛りなんでね、弁慶おっさんと違って」



    「いいですね、未来だけは語れて」







 「第4レーン、神代朱雀・サザキさんと那岐君!」



    「ハッハァー!! どうよどうよ!」



    「……まいったね、本当に走らされるなんて」



    「いいねいいね! 神子さんの為にも、軽く1番になっちまおうぜ?」



    「何でもいいけど、サザキ……」



    「何だい何だい?」



    「羽、邪魔。走る以前の問題」







 「第5レーン、鎌倉白虎・譲君と景時さん!」



    「ゆ、譲君! どうするのどうするのどうするの?」



    「大丈夫ですから、落ちついてください」



    「譲く〜〜〜ん、頼りにしてるよ〜〜」



    「兄上! しっかりしてください!!」



    「え〜〜、朔、そんなこと言っても……」



    「譲殿! 兄上をよろしくお願いいたします!」



    「朔ぅ〜……」



    「景時さん、頑張らないと家に入れて貰えないんじゃないですか、朔に?」



    「トホホ〜〜」







 「第6レーン、神代白虎・布都彦君と柊さん!」



    「私達は不慣れですからね、

     こういうことに慣れていらっしゃる人に、教えを請うのが得策でしょうね」



    「何で脚を縛るんでしょう? 何やらいかがわしいような……」



    「同性同士という状況は好ましいモノではないですが、そんな事よりも、

     より良い結果を導き出すことにだけ集中するべきでしょうね」



    「より良い結果……ですか? それはどのような」



    「かいつまんで言えば、いかにして早く走り、勝利するかですね。

     と言うことで、我が君、どうか秘訣をお教え下さい」



    「秘訣…、う〜〜んとね、あまりきつく結び過ぎないこと……かな?」



    「なるほど、確かにそうですね。さすがは我が君」



    「えへ」



    「でも……」



    「何々? 望美さん?」



    「結び目がゆる過ぎても、途中で解けちゃったら、縛り直すことになって

     逆にまずいんじゃないかな?」



    「なるほど、確かにそうですね。そうすると、う〜〜ん、難しいものですね」



    「私達の学校では、かけ声でリズムを合わせて、

     その上で、なるべくピッチを早くする練習したけどな」



    「あ! そうそう。それそれ。

     それにしても望美さんの学校って、二人三脚の練習までするんだ」


    「そだよ。どのクラスも優勝かちにすっごくこだわってるから」



    「すっごぉい♪」



    「ちょうどあそこで九郎さんと将臣君がやってるけど、

     『1、2、1、2、1、2』ってかけ声でタイミングを合わせてね、

     慣れてきたら、そのタイミングを徐々に早くしていくの」



    「そうそう、そんな感じ」



    「『りずむ』に『ぴっち』に『たいみんぐ』……ですか?」



    「はい」





望美は説明しきった感いっぱいで、これ以上ないという会心の笑みをしている。

千尋も、自分の言い足りない部分を望美がフォローしてくれた満足感でいっぱいである。





    「二の姫が賛同されるのですから、間違いのない秘訣なのでしょうが

     難しい……。これは侮ってはならないようですね」



    「二の姫が『凄い』と仰るからには、余程の奥義なのでしょう」







 「第7レーン、鎌倉玄武・敦盛さんとリズ先生!」



    「せ、先生……どういたしましょう」



    「案ずることはない」



    「え?」



    「空を見なさい」



    「そ、空…ですか?」



    「うむ」



    「み、見ました」



    「そして、大きく息をして」



    「は、はい。ス〜〜〜、ハァ〜〜〜、ス〜〜〜、ハァ〜〜〜

     先生、なにやら気持ちが落ちつきました」



    「大事なのは、平常心。そして、楽しむことだ」



    「楽しむこと……そうですね。わ、解りました、先生」



    「うむ」



    「御教授、ありがとうございます!」



サザキの羽を押しのけながら、那岐は



    (何が解ったんだか、さっぱり分からないよ。何なんだい、この2人は)



と、思うのであった。







 「第8レーン、神代玄武・遠夜君と忍人さん!」



    「遠夜、覚悟はいいな!」



    「…………………(覚悟?)」



    「何としてでも、目にモノ見せてくれる!」



    「…………………(忍人、恐い)」



    「おいおい忍人、あまり気負うと力みすぎて、まずいんじゃないのか?」



    「…………………(アシュヴィンの言うとおりだと思う)」



    「何だ! 二人して! この豊葦原全体の沽券にかかわることなのだぞ!!」



    「ほお、遠夜の言葉が分かるのか、葛城将軍?」



    「分からんが、どうせ似たようなものだろう」



    「で、勝つための策はあるのか、将軍?
     その前に、この『二人三脚れいす』というものが分かっているのか?」



    「う! と、遠夜……」



    「…………………(し、知らない)」



    「誰かに教えてもらった方がいいのではないか?」



    「それはそう……、いや、しかし、それでは……だが……」



    「…………………(誰に教えてもらう?)」



    「風早……いや! な、那岐……し、しかし……」



    「…………………(どうする?)」



    「……(困った)…」



    「俺でよければ、説明しますよ」



    「有川!」



    「ゆ、譲殿! どうして…」



    「ほお、あれほど軍人は嫌いだと言うお前が、教えるだと? どういう風の吹き回しだ?」



    「どういう競技かも知らない相手に勝っても、嬉しくないですからね。アシュヴィンさん」



    「お前も存外、人がいいな。それとも、余程の馬鹿か」



    「正々堂々としていて、立派ではないですか!」



    「と、奥方は仰っている。では、こう言い直すとしよう。余程の大物か、と。

     フッ、これでよろしいか、梶原朔殿?」



    「最初からそう仰らない点で、人を見る目の無さが伺い知れますわ」



    「さ、朔……」



    「アハハハハ、言ってくれる。さすがだな、有川。

     お前達二人は、本当に似合いの夫婦だ」



    「ま、まだ夫婦では……、どうしましょう譲殿」







こうして、二人三脚レースを知らない人々を相手に、譲の即席教室が始まったのだった。



    「兄さんも手伝ってくれよ……ってダメか。

     どこまで走って行っちゃったんだ? あの2人は…」











08/10/11 UP

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