いざ 大運動会! in 常世







第6話  位置について!













    「あ、やっと戻ってきた」



    「もう! みんな待ってたんですよ、九郎さん!」



    「すまん」



    「兄さん、いったい何処まで走ってきたんだ?」



    「ゼイゼイゼイ……、あ、あの…あそこに…、見える…、大きな木の…」



    「あそこに見える大きな…木?? どこ?」



    「ほら、ゼイゼイ……、あの…、小高くなった丘の向こうの」



    「え? あの木!? マジ! あそこって1Km以上あるんじゃん?」



    「ヒノエ、2Kmはあると思うけど」



    「ほら、やっぱり! 九郎が際限もなく突っ走るもんだから」



    「そうは言うが、将臣とて、いつまでも『1、2、1、2』のかけ声を止めなかったではないか」



    「そうだけど!」



    「しかも、この脚ではどうやって曲がったらいいのかも分からん」



    「一声かけりゃ、いつでも止めたさ」



    「おまえが『1、2、1、2』のかけ声を言い続けているので、

     いつ話しかけたものか、きっかけが掴めなかったのだ」







    「フフ、これで1組、ライバルが消えましたね」


    「弁慶おっさん、黒いな」



    「おや? 君の気持ちを代弁しただけだと思ってましたがね」



そう、ほくそ笑むヒノエと弁慶であった。







    「凄いな、あの2人」



    「将軍? そうでしょうか? ただの愚か者ではないのですか?

     これから走るというのに、あのように肩で息をする程に走り込んでしまって」



    「いや、息を切らしているのは演技だ。良く足取りを見ろ。

     一糸も乱れていない上に、疲れなど微塵も感じないだろう」



    「……………………(2人とも呼吸は乱れていない)」



    「あの『ゼイゼイ』は演技、ということですか。

     いかにも大変だったと、我々に印象づけようと?」



    「または、あの遙か彼方の木までは走っていないのかもな」



    「何故、そのようなくだらない振る舞いを?」



    「くだらない? 何処がくだらないものか。いいか布都彦。

     油断して負けるとしたら、それは油断した者が悪いからだ。

     遊びと侮ると、痛い目を見ることになるぞ。

     この勝負、すでに始まっていると心することだ」



    「え!? そ、それはどういう…」



    「心理戦はもう始まっている、ということですね。

     なるほど、奥深いものですね、『運動会』とは」



    「ハハハ、しかし柊、奴らの手の内は読めた。

     読めた以上は、もはや恐れる事は無い」



    「……………………(あの2人、そんな難しい事、考えてないと思う)」







    「選手の皆さんは各レーン前に集合して下さい!」



    「いいですか? この競技は200mのセパレートコースで行います」



    「『にひゃくめぇとる』?」



    「『せぱれぇとこぉす』とは?」



    「おいおい、九郎に敦盛…だったっけ? あんた達まで知らないって?」



    「そ、それは…」



    「ハハハ、まったくもって面目ないが、その通りだ」



    「く、九郎殿…」



    「えっと…じゃあ、望美さんの言葉を説明するね。

     う〜んとね、それぞれ選手のみなさんは、この走路を示す白線をはみ出さないように走って、

     向こうに見えるあの白いテープのゴールまで」



    「『ていぷ』? 『ごぉる』? 分からない言葉が多すぎる」



    「ああ、まったくですね、将軍。我が君、どうかもう少し詳しく御説明願えないでしょうか?」



    「あ、そっか…え〜と」



    「向こうでシャニと足往が持ってる、あの白い紐をゴールテープと言うんです。

     そして、あのテープのところをゴールと言います。

     で、この白い線の内側をレーンといい、そこだけを走って

     あの白い紐のゴールを真っ先に通過した組が、勝者ということです」



    「あ、ありがとう、譲君」



    「い、いえ…」



    「譲殿! なんでそんな嬉しそうな顔をするのですか!?」



    「え! そ、そんなことないよ、朔」



    「知りません!」



    「朔…」



    「ハハハ〜〜、朔はヤキモチ焼きたいお年頃〜〜♪」



    「あ、兄上!」



    「か、景時さん…」



    「ハハハ〜〜」







    「この白い線の内側だけを走るのか!」



    「今更驚くなよ、九郎」



    「いや、しかし…」



    「俺とお前がレーンをオーバーするワケがないだろう。大丈夫だって。自信を持てよ」



    「前半の意味は分からんが、分かった。全力を尽くす」



    「OK、それでいいぜ」







    「『れぇん』は膨らんでいる分、外側の者の方が不利なのでは?」



    「大丈夫ですよ、葛城将軍。どのレーンも丁度200m…、えぇと、同じ距離になるようになってます」



    「そうなのか?」



    「はい、そのためのスタート位置ですから」



    「競技の公平を保つために、必要な場合は決勝審判は写真判定も行います」



    「しゃしんはんてい?」



    「写メの友達ですよ、敦盛さん」



    「そうか、それにしても凄いな。運動会とは大掛かりなものなのだな」



    「風早さんの用意してくれた中にあったので」



    「せっかく風早が用意してくれたんだし♪」



    「あるなら使わなくちゃ、ね〜。千尋ちゃん」



    「はい。あ、それから審判長を、大伴道臣さんにお願いしました」



    「しんぱんちょう?」



    「競技にはそれぞれルール……規則とか決まり事、それがあるんです」



    「そのルールに違反したら失格になるんです」



    「しっかく?」



    「ズルした人の勝ちは認めないってことです」



    「なるほど」



    「で、ズルしたか正々堂々の勝負だったかを、公平な立場で審判していただこうと」



    「で、その役目を道臣に」



    「ええ」



    「実に適任な人選でしょうね。異世界の方々も納得していただけますか」



    「風早さんがそういうなら」



    「春日さん、ありがとうございます。他の方はよろしいでしょうか?」



    「望美がOKって言うんだ。異存は無ぇぜ」



    「ま、こちらは人数も少ないですしね」



    「そういうこと、かな」



    「ありがとう。望美さん、人望あるんですね。うらやましい」



    「ア、アハハハ……。ま、まあ、ね」



    「不慣れではありますが、二の姫と、そちらの両龍神の神子様のご指導の下

     競技の公正と、円滑な進行に努める所存です」



    「あ、あの……」



    「どうしたというのだ?」



    「え? 何?」

    「誰? 千尋ちゃん」



    「中つ国の兵士さんです」



    「我々は、どうしていればよろしいのでしょうか、将軍……?」



    「これから俺達は、中つ国の名誉を賭けて、競技という勝負をする」



どよめく忍人配下の兵士達



    「お前達は、この場でじっくりと見ているのだ」



    「分かりました」



    「見ることも大切な教練だ」



    「は! 御健闘を」



    「俺の勝つ姿をしっかり眼に焼き付けろ」



オーと勝ち鬨の声



    「え? 俺の隊はこんなに大勢、いただろうか?」



    「どうやら俺の方の連中も出張ってるようだ」



    「殿下?」



    「常世の兵士達さ」



    「ま、地元ですからね。どこからか聞きつけて集まってきたのでしょう」



    「リブ、お前……」



    「や、こういう事は賑やかな方が盛り上がるかと思いましたもので」



    「フッ、やはりな。中つ国の兵と小競り合いなど起こらぬように、巧く場所を差配してくれよ」



    「ま、そこはぬかりなく。間には、常世と中つ国の一般の人々も」



    「お前、いつそんな連中を呼び集めたのだ?」



    「や、先程ですよ」







    「位置について!」



    「位置?」



    「さっきの『れぇん』とやらのことだろう」



    「数字が書いてあるじゃないですか」



    「先輩、算用数字じゃ分からない人が多すぎますよ」



    「え? 何で??」



    「ああ、そうか! 望美さん、漢字じゃないと」



    「そっか! 千尋ちゃん、早く言ってよ」



    「や、大丈夫でしょうかね? この神子2人……」











08/10/14 UP

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