いざ 大運動会! in 常世









当サイトの望美ちゃん(と白龍)は「遙かなる時空の中で3」も「十六夜記」も「迷宮」もすべてオールクリアということで……

神のみぞ知る。 白龍かみ望美知る……ということでお許し下さい。










第10話  フィールド内には入らないでください!















    「!! あ、あれは……」



    「敦盛? どうしたんだい?」



    「ヒ、ヒノエ………。私は…、私は夢を見ているのだろうか」



と震える指で力無く示す方を、ヒノエが見る。











それはフィールドの中央、

烏帽子と直衣も艶やかに、公達姿の若者が





    「いったいぜんたい、どういう事なのです!」



    「まあまあ、落ちついてください。惟盛殿」



    「経正殿、これが落ちついていられるものですか!

     これから、急ぎ音戸ノ瀬戸へ参ろうとしていたところなのですよ。

     どこなのです!? この草深い鄙は?」



    「さぁ、私にも……」



    「…だるいな……」



    「と、知盛殿! 立ち上がってください。

     牛車が消えたのですよ、そのようなところに寝ころんでおらずに」



    「やれやれ……、面倒だな…」



    「え!!!! あ、ああ!!」



    「そのような頓狂な声など出して、どうされたのです? 経正殿?」







経正にはそんな惟盛の声など届いていなかった。

全身が視神経になったように、一点を注視していた。

見間違いではないのだろうか

いや、見間違いではない

見間違いでは無いが、にわかには信じがたい

しかし…



    「ま、まさか……、あ、あれは…」



経正の視線の先にあったのは

決して、一時たりとも忘れたことのない愛しい弟、平敦盛の姿であった。



    「あぁぁ!! やはりあれは! ま、間違いないのですね……」



    「兄上!!」



    「あ、あ、…敦盛ぃ!!!」



2人は駆け寄り、固く手を取り合い



    「こ、これは…、夢なのですね。ですが、しかし…、

     ああ、夢ならば、夢であっても、醒めないでおくれ。

     敦盛!!」



    「兄上、夢ではありません。

     私は、こうしてしっかりと、兄上の御手を握っているではないですか」



    「ああ、ああぁぁ、敦盛! もっと、もっとよく顔を見せておくれ。

     ああ、そうだ、この顔だ。

     片時たりとも忘れたことはない、敦盛!」



    「兄上、私もです。お会いしとうございました!!」



そう言って肩を抱き合い、その場に2人は泣き崩れた。





    「感動の…再会……か、ククク」



    「いったいぜんたい、どうしたということなのです? 誰か説明なさい!」



    「敦盛、ここはいったい? それに私達はどうしてここにいるのだろうね?」



    「わ、私にも……、ただ」



    「ただ?」



    「推察しますに、神子の願いを白龍が聞き届けたがゆえの結果かと」



    「神子!?  ああ、あのいまいましい白龍の田舎娘ですか」



    「ククク…、さすがは龍神の神子……、我々の都合など……お構いなしでいらっしゃる……」



    「惟盛殿も知盛殿もそのような事を仰っては、神罰がくだりますよ。

     で、その神子殿はどちらにいらっしゃるのですか?」



    「あちらに……」



と敦盛が指さす方を見やると、こちらに駆け寄る女性が1人。

ああ、あの神々しい姿こそ龍神の神子姫殿。

そう元但馬守・経正卿は確信した。



    「経正さん! お久しぶりです」



    「これは、龍神の神子殿」



    「これ! 小娘!」



    「あ、惟盛さん、こんにちは」



    「『こんにちは』ではありませんよ!

     いったいどういう理由でここに私達はいるのです?

     ここはいったい何処なのです?」



    「ここは」



    「ここは常世の国です。あなたや望美さんの世界でいう所の『神代』の時代です」



    「こ、小娘が2人!」



    「や、この方は豊葦原は中つ国の第二皇女であらせられます」



    「リブさん」



    「そしてオレの妻だ」



    「あなたは?」



    「や、常世の第二皇子、黒雷・アシュヴィン殿下でいらっしゃいます」



    「ホォ……、なにやら……血の臭いがする……ククク」



    「皇族でいらっしゃるのか。ああ、やっとまともに語り合うことのできる人間が現れましたね」



    「お前は?」



    「私は平重盛が一子、従三位、右近衛権中将如元、伊予権守、平惟盛と申します」



    「長い名前だな」



    「な! 失礼な。 これだから白龍の神子の関係者はオコばかりで、嫌なのです!」



    「『平重盛が一子』は家系を、『従三位』から『伊予権守』までが階級を示しているんですよ」



    「やれやれ、面倒な自己紹介なのだな」



    「でも、正しくはそれは寿永元年までのことで、

     翌年には平家一門は全員、後白河院によって解官されたはずです」



    「そ、そのような事、私は認めていないのですよ!」



    「そう仰るからには寿永元年以降の時代から来たのですね」



    「あの、あなたは…?」



    「俺は風早」



    「さすがは地歴の先生だね、千尋ちゃん」



    「うん」



    「フン!」



    「惟盛さん、失礼の無いようにして下さいね」



    「何ですか、小娘が私に命令するつもりですか!?」



    「いえいえ、ただ」



    「ただ?」



    「風早さんのこの姿は仮のもので、本当は神様なんですから」


    「なななななな何を、ば馬鹿げたことを。そのようなことで私をたばかろうとしても無駄ですよ。

     フン、下賤の娘の言いそうなこと」



    「って言いながら、動揺しまくってますよ」



風早が一瞬だけ麒麟の姿を見せる。



    「ククク、面白い……。怨霊に龍神に……茶吉尼天、……次は麒麟か……。

     白龍の神子……、お前は本当に……オレを飽きさせない女だ」



    「ででで? 私達は何の為に呼ばれたのです?」



    「『運動会』の選手が足りなくて」



    「『うんどうかい』? 何ですか、それは??」



    「正々堂々と戦い抜く『試合』だと言っていた」



    「ああ、そう言った」



と、背後から九郎と忍人が言った。



    「!!! ななななな何でここに源氏がいるのです!! それもいまいましい九郎義経が!」



かえって、その一言で千尋と那岐が驚く。



    「ええぇぇぇ!! 九郎さんって、源義経なんですか?」



    「こいつが義経……本当に?? やれやれ。

     弁慶が武蔵坊だから、あり得ないことはないって思ってたけど。参ったね。

     っていうことは、あの敦盛って、あの平敦盛なのかい? ウソだろう…」



    「あれ? 千尋ちゃん達、知らなかったの?」



    「え、えぇ……」



    「やれやれ、こんな長髪な判官義経なんて、信じられないね」



    「伝承の人相・風体と、随分とかけ離れているのですね」



    「風早さん、弁慶さんを知っている人のセリフとは思えませんよ」



    「それは…、そうですね。フゥ、龍神の酔狂も極まった感がありますが」



    「ああああ、破戒僧・弁慶やら裏切り者の梶原やら、このように敵ばかりのただ中に!

     うむを言わせず従わせようという魂胆ですね!」



    「まあまあ、惟盛殿。源平の和議は成ったのですから。で、そちらの方は?」



    「俺は葛城忍人、中つ国の将軍の任を賜っている」


    「ククク、3つの時空ときの……強者共がつどっている、というワケか……。

     面白い……。で……? どのような…試合なのだ」







    「なるほど、それで呼ばれたというのだな」



突然、背後の観客席から男が2人、飛び降りて九郎に近付きながら、

その内の1人がいまいましそうに言った。



    「ええ、そのようでございますね。泰衡様」



    「!! 泰衡!!」



    「御曹子殿」



    「久しぶりだな!!」



    「相変わらず、けたたましい奴だ」



    「ホォ、重衡……ククク、生きていた……のか」



    「はい、兄上。お懐かしゅう存じます」



    「フ……、相変わらず、心にも無いことを……、ペラペラと……」



    「ワンワン!」


    「な! 何なのですか! このけだものは!!」


    「く、くがねか?」



    「ワンワン!」



    「金! アハハハ! 金、懐かしいな!」



    「ふん、源氏の総大将など、所詮は下賤の者。畜生とじゃれ合うのがお似合いなのですよ」



    「俺の金を、畜生と言うか」



    「あなたは誰なのです?」



    「奥州藤原氏当主、秀衡様の御嫡男、我が主、藤原泰衡様にございます」



    「ああ、源義経を自害さ」



    「風早さん! それは言っちゃダメ!!」



    「何のことだ? 俺が御曹子を自害させる?」



    「何でもないです!! 何でも」



    「泰衡、後でゆっくり俺が説明してやる」



    「く、九郎さん!」



    「いいではないか、望美。

     さ、それより泰衡、折角来たのだ、『げぃむ』の『れぇす』に参加しないか?」



    「御曹子殿、分かって言っているのだろうな」



    「あ、アハハハハ」



    「やはり分かって言っているのではないな。

     そうやって笑って済ませようとするところも、相変わらず、か」











    「OK! じゃぁ第2レース、出場チームの紹介をするぜ!

     ちなみに第2レースは10チームのため、レーンが足りないぜ!

     そこでセパレートではなく、オールオープンコース競技だァ!!

     じゃ、内側から適当に

     まずは『神代・神子』チーム 葦原千尋! それと那岐!」



    「頑張りま〜〜す! アシュゥ!!」



    「あ〜〜あ、参ったね」







    「次に『鎌倉・神子』チーム 春日望美! ア〜ンド梶原朔! ここはある意味最強だぜ!」



    「将臣君、ある意味って何!」



    「朔! ガンバレ!」



    「譲殿、そのような大きな声で」



    「うれしいくせに」



    「の、望美…」



    「朔ぅ〜! お兄ちゃんもついてるよぉ!」



    「……」



    「朔ぅ〜〜!」







    「『神代・ちびっ子』チーム シャニ! 足往!」



    「兄様! 負けないからね!」



    「忍人様! 頑張ります!!」







    「OK! 続いて『鎌倉・ちびっ子チーム』 ヒノエ! 敦盛!」



    「ま、将臣殿…」



    「へぇ、言ってくれるじゃん」



    「ヒノエ……?」



    「『チビっ子』だそうだからね、敦盛。後へは引けないよ。勝つからね」



    「わ、分かった」







    「『神代・何様』チーム え〜と、誰だっけ?」



    「兄さん、ナーサティヤさんだよ」



    「あ、そうだったそうだった、悪りぃ。ナーサティヤ殿下とアスビン殿下」



    「アシュヴィンだもん!」

    「や、アシュヴィン殿下です!」



    「失礼な奴だ」



    「ああ、存外恐れを知らぬな、有川の兄は」



    「アシュ、これは挑発なのだろうな」



    「ああサティ、受けて立つだろう?」



    「当然。あの失礼な鎌倉青龍の鼻をあかしてやる」







    「OK、そのぐらい闘争心に火を点けてくれなきゃぁ、面白くないぜ!

     次! 『鎌倉・何様』チーム 平惟盛! それと平知盛!」



    「ななな何であのような者に、呼び捨てにされなければならないのですか! 私は認めませんよ!」



    「面倒…だな……、ククク」







    「ここもある意味何様な『神代・将軍』チーム 葛城忍人! 布都彦!」



    「将軍! あの者、失礼な物言いです!」



    「放っておけ、布都彦。あれは奴の挑発だ。今は目の前の試合にのみ集中しろ」



    「はい! 将軍!」







    「そしてツンデレ『奥州将軍』チーム 藤原泰衡! 平重衡!」



    「フ、お前が平の者だったとはな」



    「申し訳ありません、泰衡様」



    「記憶が戻ったなら、何故、平家に戻らなかったのだ?」



    「それは…、私が泰衡様を御尊敬申し上げているからでございます」



    「『うい奴だ』とでも、俺が言うと思うか?」



    「いえ。しかし、泰衡様にお仕えする事が、今の私の喜びでございますので。

     どうか今まで通り、『銀』と御下命くだされば、幸せに存じます」



    「ちょっと待って!」



突然、望美が泰衡と銀のところへ走り寄った。



    「龍神の神子? 何の用だ?」



    「あ、泰衡さんじゃ無いんです。銀に」



    「私に? 神子様、どのような御用件でございましょうか?」



    「すっかり忘れてたんだけど」



と言って、突然、望美は銀に抱きついた。

その途端に銀の身体から煙が立ち上り、

銀は何かワケの分からない叫び声を上げてその場に崩れ落ち、気を失った。



    「の、望美!」



    「龍神の神子! これはいったい!?」



    「すみません。突然で驚かれたと思いますけど。ゴメンなさい」



    「ああ、十分すぎるほど驚いた」



九郎達も駆け寄ってくる。



    「の、望美! どうしたと言うのだ! 女性から男に抱きつくなど」



    「そうです! ふしだらです!!」



    「シっ! 布都彦」



    「見ろ、重衡殿は、あまりのことに気を失われたではないか!」



    「九郎、少しは落ちつきなよ。望美がそんな軽い女じゃないのは十分承知してるじゃん」



    「ありがとう、ヒノエ君。実は、銀さんは政子さんによって魂魄に呪詛をされてたんです」



    「へぇ、初対面の人間に、しかも誰が呪詛を施したかまで分かるなんて、

     さすがはオレの神子姫様だね。な、敦盛」



    「あ、あぁ。神子はやはり凄いのだな」



    「それで、銀は記憶も無くなり、身体中を包帯で…というわけか」



    「そうなんですよ、泰衡さん。

     あ、気が付きましたか? 銀」



    「神子様……、ありがとうございます。おかげで身も心も軽くなりました」



    「銀、なぜ今まで黙っていた?」



    「泰衡様…、これは、私の業のなせるワザなのだと思っておりましたゆえ」



    「業…」



    「はい」



    「その業も含めて浄化しちゃいましたから」



    「フ、軽く言ってくれるな。龍神の神子殿……」



珍しく泰衡が居ずまいを正して望美を見つめる。



    「はい?」



    「1度しか言わぬ。…感謝する」







    「何だかよく分からないけどOK!

     みんなハッピーになったところで紹介の続きに戻るぜ!

     次、『神代・この中では比較的常識人』チーム リブ! カリガネ!」



    「や、『常識人』だそうですよ」



    「………………………………『比較的』が不快だ」







    「ラスト! 『鎌倉・この中では比較的常識人』チーム 平経正! そして白龍!」


観客が一斉に恐慌パニックに陥る



    「白龍だって!!」



    「あ、あれが…」



    「荒ぶる神・白い龍!?」



慌てて千尋がマイクを掴み



    「安心して!! 豊葦原の白龍じゃないですよ!!
     それに豊葦原の白龍は、有川君と弁慶さんが和神にぎたまにしてくれたじゃないですか!」



二の姫の声に観客は安堵し、そして思い出す。
以前、白龍が異世界の者との誓約うけいによって和神となり、

この世界の安寧を1500年間は見守る約束をしたという噂を。



そんな騒ぎをよそに白龍が言う。



    「将臣、私は『人』ではないよ」



    「白龍! つっこみどころはそこなの!?」



望美と朔、千尋の3人はそんな白龍に笑い転げるのだった。











09/02/01 UP

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