いざ 大運動会! in 常世
第11話 次の競技を発表します!!
第2レース後である。
千尋が嬉しそうにアシュヴィンに走り寄る。
「アシュヴィーン、どうだった? 結構、速かったでしょう?」
「ああ、存外速かったな」
「でしょう、でしょう」
「やれやれ、怪我せず完走しただけで、良いんじゃない」
「じゃ、第2レースの結果を発表するぜ。第1位、『ナーサティヤ・アシュヴィン』チーム!」
「アシュ! 勝ったぞ」
「当然だろう、サティ」
「ああ、そうだな」
「しかし、存外楽しめたな」
「そうだな」
「第2位、『忍人・布都彦』チーム!」
「将軍、どうされました?」
「またも2位か…」
「申し訳ありません、私の力不足で、将軍の足を引っ張る事になってしまい」
「いや…、お前は十分頑張った」
「もったいないお言葉です!」
「確かに『うんどうかい』は、十分鍛錬になる。悔しいが、侮れん」
「将軍!」
「第3位! 『鎌倉・ちびっ子チーム』 ヒノエ! 敦盛!」
「どうしてもオレ達を『ちびっ子』扱いしたいらしいね、将臣は」
「ヒノエ、将臣殿はからかっているだけだ」
「ああ、分かってるさ、敦盛。
だけど、こいつは高くつくからね。ま、このツケは、後できっちり払って貰うよ。
熊野の頭領の名にかけてでも」
「ヒ、ヒノエ……」
「続いて、第4位、『白龍・経正』チーム!」
「白龍殿」
「『走る』というのは難しいね、経正」
「はい、そうですね」
「でも、飛ぶと神子に怒られるから」
「しかし、その神子様を追い抜いてしまわれましたが」
「うん。でも神子は正々堂々と負けを認めr」
後ろからポカっと頭を白龍は叩かれる。
「痛い」
「な!? 白龍殿!」
経正が振り向くと、そこには怒りに満ちた表情の望美が仁王立っていた。
「白龍!」
「み、神子殿…」
「神子、ひどい」
「何で抜いちゃうの!」
「抜いたのは、私だけでは無いはずだよ」
「白龍は、白龍だけは私の味方だと思ってたのに!」
「私の神子。私はあなたの龍。常にあなたと共にある」
「だったら! 龍神の力で私を勝たせてくれたって良かったのに!」
「人の言の葉は難しいね。神子は宣誓で『正々堂々と戦い抜く』って言葉にしたから」
「白龍のバカッ!」
「……さすがはオレが認めた…、獣のような……神子……。
勝つには……手段を選ばない……ククク」
「おぉっと! このレースでも同着が出たぜ! 同じく第4位だ! 『泰衡・銀』チーム!」
「泰衡様、申し訳ありません」
「俺も、鈍ったものだ」
「このところ御政務がお忙しくていらっしゃいました故、いたしかたないのではと」
「銀」
「はい」
「気休めや慰めは無用だ。此度の『うんどうかい』とやらの間に、鈍った身体は鍛え直すぞ。
そうでなければ、御曹司と父上に何と言ってからかわれるか、分かったものではないからな」
「はい。及ばずながらこの銀、泰衡様に御助力申し上げます」
「ワンワン」
「金、お前も手伝ってくれるのか」
「ワンワンッ」
「続いて6位、『リブ・カリガネ』チーム!」
「ま、順当なところ、ですか」
「…………………………………飛べば、サザキより速い」
「や、飛んだら失格ですから」
「…………………………………だから飛ばなかった」
「ま、敢えて言わせて貰うと」
「…………………………………何だ?」
「羽根が邪魔な割には頑張った、というところでしょうか」
「…………………………………そうか」
「次だ、次!! ヘッヘッヘ! どうした望美!
大本命まさかの失速で、7位だぜ! 『望美・朔』チーム」
「兄さん!! そんな言い方は無いだろう!!」
「お!? 譲、どうしたんだ?」
「兄さんは無神経なんだよ」
「そうだよそうだよ〜 将臣君! 朔ぅ〜 頑張ったよ〜〜〜!」
「兄上、譲殿……。望美、ごめんなさい。あんな所で転んでしまって」
「ううん、朔。謝るのは私の方だよ。朔は悪くないから。
私の結び方がヘタだったのが悪いんだよ。2度も縛り直してて、手間取っちゃったから」
「望美……」
「さ、終わった事はくよくよ考えても仕方ない。
次だよ、次! 次こそはしっかり作戦練って勝とうね!!」
「ええ、そうね望美。約束するわ、今度は失敗しない。絶対!」
「と、神子2人が固く手を握り、必勝を誓ったところで、第8位の発表に移るぜ!
第8位は『シャニ・足往』チーム」
「シャニ〜〜、ビリじゃなかったよ〜〜」
「よかったよ。でも、こんなことなら日記に書いておけばよかった」
「え? 何を??」
「『信じられない速さでシャニ・足往組1位』って」
「シャニ、勝ちたかったんだね」
「……うん」
「もっともっと鍛錬を積めば必ずや強く、いや、速くなれる」
「忍人様」
「うん、そうだよ。頑張ろう」
「そうですね。忍人様、おいら、もっともっと頑張ります!」
「ああ、足往、その気持ちを忘れるな」
「何たって、僕達は他の人より若いんだ。その分、未来がいっぱい有るってことだもんね、足往」
「そして第9位! これは予想外なのか、順当なのか。『千尋、アンド那岐』チーム!」
「順当……だな」
「や、殿下…、千尋様に聞かれます」
「お前だってそう思ってたんだろう、リブ」
「ま……、そう、ですね」
「ひっど〜〜〜い!! さっき『存外、速かった』って言ってくれたじゃない!
頑張ったのに!! ね〜〜、那岐」
「こっちに振らないで欲しいね」
「泣いちゃうからね」
「『怪我せず完走しただけ、良い』って言っただろう。
それ以上でもそれ以下でもない、ってのが僕の率直な感想だからね」
「もういい。ひとりで泣いてくるからっ!」
と走り去る千尋。
その後を気遣って追う望美と朔。
「お〜〜っと ここで龍神の神子3人とも退場で、場内騒然だ!
完全に悪役となってしまった那岐に場内からブーイング!」
「やれやれ、まいったね。でも、これって僕のせい? アシュヴィンじゃないの?
ま、非難されるのは慣れてるから、気にもならないけどね」
「と、自分でも悪役を認めた那岐に、更なるブーイングの嵐だ!」
「認めてないから」
「OK! そしてここは順当、妥当、やっぱりね、の失格!! 『惟盛・知盛』チーム!!」
那岐バッシングの場内が一転、爆笑の渦に変わった。
何と、観客が注目しているのは、まだスタートラインのところで呆然と立ちつくす惟盛と
その隣で寝ころんで欠伸をしている知盛の姿だった。
「あああ、だから嫌だったんです。こんな下賤の者達との『うんどうかい』など」
「皇族も……いるからと……、やる気満々……だったのではなかったか?」
「そう言う知盛殿が寝ころんでいて、まったく走らないものだから、
こうなってしまったのではないですか!!」
「……だるいな…」
「よく、そう毎日毎日、寝てばかりいられるものですね」
「ククク……、まあ…な」
「弁慶、『第二れいす』というものも終わったな」
「ええ、そうですね、九郎」
「存外、楽しめた」
「や、これが『うんどうかい』というものなのですね」
「アシュヴィン殿下にもリブ殿にも、御堪能いただいたことですし」
「ああ、そうだな。弁慶、そろそろ帰るとするか」
「ええ、そうですね」
「弁慶、お前や有川達のやることは、存外飽きないな」
「それは、僕達の神子が望美さんだからでしょうね」
「名残は尽きないが」
「ええ、アシュヴィン殿下もお元気d」
「チョット待ったぁ!!!!」
「の、望美!」
「望美さん?」
「白龍の神子?」
「人がいない間に、何、お開きしそうになってるんですか!」
「え? でも、『うんどうかい』の『二人三脚れいす』というものは終わったのではないですか?」
「はい」
「だったら」
「『運動会』は二人三脚レースだけではないんです」
「何だと!」
「え!」
「ほう」
「他にはどのようなものがあるのですか?
望美さん、よろしければ僕に教えてくださいませんか?」
「『綱引き』とか『徒競走』とか『応援合戦』とか『組み体操』とか『ダンス』とか」
「先輩、だんだん競技じゃないものになってますよ」
「『仮装リレー』とか『借り物競走』とか、え〜と、それからそれから」
「さりげなく軌道修正したんでしょうが、色物競技ばかりですよ、先輩」
「『パン食い競走』とか、『パン食い競走』とか、『パン食い競争』とか……それから」
「お腹空いてたんですか、先輩?
それに三つ目の『競争』って字が違いますよ、大食い選手権じゃないんですから」
「それから、『玉入れ』とか『棒倒し』とか『騎馬戦』とか!」
「『騎馬戦』!」
瞳を輝かせたのは、九郎一人ではなかった。
09/03/21 UP