いざ 大運動会! in 常世









第12話 騎馬戦での暴力行為は失格となります!











    「騎馬戦か!」



    「しかし九郎、馬はどうするのでしょう?」


    「そう言えば、だからなのだな。望美は、鵯越ひよどりごえでも恐がりもせず馬の背に乗っていた」



    「ええ、そうでしたね」



    「すごいな! さすがは譲お兄ちゃんの白龍の神子だね、足往」



    「うん、おいら、まだ馬にまたがれないもん。

     忍人様。おいらにも出来るようになりますか?」



    「ああ、幼い頃から鍛錬を積まなければ、騎馬での戦など到底できないからな」



    「すごいすごい」


    「だからこそお兄ちゃんは、荒御霊あらみたまの白龍を和霊にぎたまにできたんだね」



    「ああ、そうだな。千尋以上の弓の使い手だった」



    「ま、そうでなければ天鹿児弓や天羽羽矢が認めるわけはないでしょうからね」



    「ククク……、楽しめそう……だな」



    「なななななんですか、やる気満々で!!

     どうせなら、先程から、そのやる気を見せて欲しかったですね」



    「ククク、惟盛」



    「何ですか!」



    「負けるのが……悔しいのか?」



    「! 当然ではないですか。それもこのような鄙で。

     都人、殿上人としての自負というものが、私にはあるのですよ」



    「あの〜」



    「望美、何だ?」



    「望美さん、どうされました?」



    「異世界の神子殿、馬はどうされるのか?」



    「あの〜、盛り上がってるところ、申し訳ないのですが」



    「何だ? 千尋まで」



    「勘違い……なんです」



    「? はい?」



    「私達の世界の運動会の『騎馬戦』って」



    「本物の馬は使わないんです」



    「馬を使わない『騎馬戦』??」



    「望美、それはいったい何だ!」



    「まあまあ、九郎。落ちついてください。望美さんは今『本物の』と仰ったではないですか」



    「そうです」



    「では、どういう『偽物』の馬で行うのか、御説明願えませんか?」



    「はい。と言うより、今それを言おうとしていたんです」



    「ええ、ですから」



    「将臣君、譲君、それから那岐君、ちょっとこっちへ来て手伝って」



    「分かった分かった、そう来ると思ってたよ」



    「やれやれ、面倒だな。ホント、人使いが荒いんだね」



    「騎馬を作ってみせればいいんでしょう、先輩」



    「うん、お願い」



    「で、千尋ちゃん、上に乗って」



    「え? わ、私?」



    「そ、この帽子を被って」



    「紅白帽? え! 帽子を取り合う騎馬戦ですか!?」



    「え? 騎馬戦ってそうでしょ」



    「私達の高校では、かなり前にそれで怪我人が出て、帽子取りでは無くなったんです」



    「そうなんだ」



    「これと同じで、騎馬は男子だけど上に女子が乗るので、

     危険の無いように頭に丸いえびせん付けた帽子を被って、

     新聞紙を丸めた剣で割るっていうやり方なんです」



    「えびせん?」



    「しんぶんし??」



    「そうなんだ。男女混合競技じゃ、そうかもね」



    「春日さんの高校は違うんですか?」



    「うん、うちの高校では男子の種目だから、帽子取り形式」



    「ラッキーなことに俺と望美が1年生までは、大将騎馬を1騎、それと護衛騎馬を四騎作って、

     大将騎馬が潰れれば、他がどうなっていても負けっていう、

     ハードでエキサイティングな競技だったんだぜ」



    「怖〜い」



    「でも、それでかなりの怪我人が出たって聞いてるぜ、兄さん」



    「ああ、不幸な事故ってやつでな」



    「将臣君のクラスが3年生と決勝戦で当たって」



    「相手が3年じゃ、1年生に怪我人も出るわけだ。無茶だったんだ」



    「違う違う、譲」



    「え?」



    「逆なんだよ、譲君」



    「考えてもみろ、譲。大将騎馬を潰せばいいんだ。簡単じゃないか」



    「?? どうするんだ?」



    「足の速い奴の馬を三騎作る。で、開始と同時にダッシュで相手の大将騎馬に走り寄る。

     相手は騎馬同士のぶつかりあいだと思って身構える」



    「まあ、当然だろうな」



    「そこで、こっちの護衛騎馬の上に乗った奴を相手の大将騎馬めがけて、ぶん投げる」



    「なんだって!」



    「しかも三騎同時に。で、相手の大将にウエスタンラリアット! ボディースラム!」



    「怪我人、出て当然だね」



    「俺達はこれを『トマホーク作戦』と名付けて連戦連勝」



    「で、学年優勝して、学年枠を越えた準決勝進出って訳か。

     長々とどうでもいいような説明をご苦労様」



    「いや! 譲、どうでもよくは無い! 将臣、素晴らしい!! それでこそ平家の還内府だ!」



    「九郎さん?」



    「我が身を捨てて、自軍の為に相手の大将を仕留めようなどと、立派ではないか!」



    「ああ、素晴らしい武人魂だ。この忍人も感服した」



    「ククク……、血が騒ぐ……な」



    「OK、ところがこの話には続きがあるんだ。聞きたいか?」



    「うんうん」



    「ああ、是非」



    「ククク……」



    「兄さん、それ、長くなるのか?」



    「学年優勝後の2年生との準決勝でのことだ」



    「ああ」と瞳を輝かす九郎。



    「ゴクリ」と生唾を飲み込む忍人。



    「俺達のトマホーク作戦に、2年生が対抗してきたんだ」



    「と、言うと?」



    「相手の護衛騎馬も騎手を飛ばしてきた」



    「ま、何と!!」



    「存外、バカな連中で面白い」



    「2年生はこれを『迎撃ミサイル』と呼んでいた」



    「凄かったよ〜。柔道部とかラグビー部とかのいかっつい男子が五人も六人も空中を飛んで」



    「やれやれ、どんな高校なんだい。考えただけで頭が痛くなるね」



    「2〜3メートルの高さでの肉弾戦」



    「そこから落ちるんだから、ただでは済むわけ無いよな」



    「準決勝はラッキーだったんだ。捻挫と打撲が四人で済んだ」



    「凄かったんだね、春日さんの高校の運動会」



    「うん。救急車が『今年は2回だけだった』って表現で語られたからね」



    「わくわくするではないか」



    「で、3年との決勝戦は」



    「ああ、それだ。はやく話してくれ将臣」



    「OK! 俺達は『迎撃ミサイル』に対抗する案を考え出した」



    「そ、それは?」



    「まあまあ、九郎。慌てない慌てない」



    「あ、ああ、済まん」



    「ところがさすがは3年だ、俺達の『トマホーク』対策と、

     それに俺達が『迎撃ミサイル』対策を考えてくることも読んでいたんだ」



    「す、すごい」



    「やはり、単なる力押しでは戦は勝てない、という手本のような話だ

     布都彦、足往も、心して聞いておけ」



    「はい」



    「はい!」



    「やれやれ、もっと別のことに頭は使った方がいいんじゃない」



    「結論から言うと、同じ作戦だった」



    「何と!」



    「『攻撃』と『防御』は表裏一体、攻めようとしても守ろうとしても結局は同じ、なのですね」



    「ああ、そういうことだ弁慶」



    「で、その策とは」



    「大将騎馬も含めて、五騎全部飛ばした」



    「なんと!」



    「す、すごい!!」



    「これこそ捨て身!」



    「やれやれ、大将が飛んじゃったら、負けなんじゃない?」



    「で、どうなりました?」



    「ククク、全騎空中……。さぞ、見もの……だったろうな」



    「結局、一瞬の勝負だった」



    「でしょうね」



    「で、全騎落馬という事で引き分け再試合……に、なるはずだったんだがな」



    「どういうことだ?」



    「やれやれ、それっていつまで経っても再試合、じゃないの?」



    「相手の大将が鎖骨骨折。他にも肋骨折ったのがいて、

     こっちも膝の十字靱帯損傷と、肘の脱臼がいて、競技は危険すぎるって理由で中止」



    「なんと非道な!」



    「こ、惟盛…」



    「惟盛さん」



    「ククク、身を乗り出すくらいには……興味がおありだった……ようで」



    「う〜〜〜ん」



    「どうした、望美?」



    「う〜〜〜〜〜ん」



    「千尋?」



    「ね、千尋ちゃん、朔、ちょっと」



と、神子三人がひそひそと密談を交わす。



    「えーと、みんな期待してる競技は、危険だからしません!」



    「何!!!」



    「なぜです! 二の姫!」



    「残念ですね。せっかくここまで盛り上がったというのに」



    「弁慶殿、そんなに飛びたいなら、別の機会に個人的になさって下さい」



    「朔殿……」



    「と言うことで、騎馬戦は千尋ちゃんの学校の『えびせん帽子』方式に決定!」



    「な、なぜだ!」



    「九郎さん、理由は今、先輩と朔、それに葦原さんが説明したと思いますよ」



    「えびせん割られるか、騎馬が潰れて乗り手が落ちるかしたらアウトですからね」



    「やれやれ、だから武闘派は嫌いなんだ。あ〜あ、めんどうなことはごめんだからね」



    「と、言うことで風早さん」



    「えびせんと新聞紙、よろしく」



    「ええ、話の展開からこうなることは読めましたからね」



    「じゃあ」



    「本部席のテントの段ボール箱に入ってます」



    「わ〜〜い、風早、大好きぃ」



    「では、みなさん、準備に取りかかってください」











    「こう…か?」



    「どうして斜めに巻くのかな〜? 将臣君〜〜??」



    「その方が、長くなるだろうが!」



    「でもでもでも、そうなると両端が弱くならないかな〜〜」



    「だから、こう、ぐるぐるっとガムテープでガッチリ固めるんだよ! OK?」



    「そ、それって、いいのかな〜〜」











    「こうして、なるべく下向きに帽子を被るんだね」



    「那岐、なぜそうするんだ?」



    「その方が、えびせんの的を狙いづらいからに決まってるだろう。

     あ〜あ、なんでこんなことやってるんだろう、僕」



    「なるほど」



    「俺は認めん!」



    「忍人さん?」



    「『正々堂々戦い抜く』、そう神子が宣誓したではないか。こんな小細工など」



    「ま、僕はどっちでもいいけど」



    「ならば!」



    「でも、どんな手を使っても勝ちにくる神子だったんじゃなかったけ、むこうの彼女。

     さっきの発言、聞いてなかったのかい」



    「そ、そう言えば……」



忍人達は、新聞紙を丸め直し始めた。



    「あれ? 『正々堂々』はどうしたのかな?」



    「い、いや……、むざむざ負けるのは性分ではないから」



    「ま、どっちでもいいけど」











    「では、騎馬を組んでください」



道臣の号令で、神代、鎌倉それぞれ四騎の騎馬が立ち上がる。

歴戦の勇士だけあって、どの騎馬も精悍で、観衆は感動と興奮で大騒ぎとなる。



東に鎌倉チーム、

北から第一騎馬、前に九郎、両脇が泰衡と銀で、騎手はヒノエ。



    「源氏の総大将に、奥州将軍、平家の公達に、熊野の頭領

     オールスターだね、これは」



    「ああヒノエ、負けるはずがないだろう」



    「九郎…、『オールスター』の意味、分かってるのかい?」



    「……」







第二騎馬は、前に知盛、両脇が惟盛と経正で、騎手は当然、敦盛。



    「な、何故『当然』、なのだろうか?」



    「な! な、な、なんで私がこのように汗くさいことをせねばならないのです!」



    「敦盛、頑張りましょうね」



    「はい、兄上」



    「ククク、やる気満々で……結構なことだ…」







第三騎馬は、前にリズヴァーン、脇を弁慶と白龍という因縁ペアが固め、騎乗するのは望美である。



    「先生、よろしくお願いします」



    「これも私の運命だ。お前をしっかりと支えよう」



    「え! そんなに重くは……、最近はしっかりダイエット、いえ、鍛錬にも励んでたはずだし」



    「望美さん、リズ先生は君の体重の話をされたのではなく、あなたを守るという話を」



    「神子、重い」



    「白龍のバカァ!」







第四騎馬には、前が将臣、脇が景時、譲で、騎手は朔。



    「OK! バッチリいこうぜ!!」



    「朔、大丈夫か?」



    「え、ええ、譲殿。でも…」



    「何だい?」



    「こうして譲殿と兄上の腕にまたがるなど、夢にも思いませんでした」



    「大丈夫大丈夫ぅ〜〜、軽い軽い〜ってね。さ、ど〜〜んといってみよう!!」



    「あ、兄上…、私、恥ずかしいわ」











09/04/19 UP

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