いざ 大運動会! in 常世
第2話 集合!
「こ、ここは!?」
「え? ま、まさか……」
「べ、弁慶…? ここがどこだか分かるのか?」
「ええ……、多分。でも、これは……困りましたね」
「何処なのだ? 教えてくれ! 弁慶!!」
「九郎…、少し静かにしていてもらえますか?」
「え? あ、あぁ、すまん。つい、興奮して……」
(以前来た神代の世界…ですよね、ここは。いったいどうして? 誰が……)
「九郎、驚かないでくださいね」
「もう、充分すぎるくらい驚いている」
「そうでしょうね。いいですか、ここは『神代の国』です」
「『かみよ』? 『かみよ』とは、どこにあるのだ? お台場の向こうか? それとも、京成幕張か相模大野の先か?
それともヒノエがよく出掛ける『あめりか』とかいう方か?」
「ああ、そういう認識ですか……。残念ながら違います。
僕達は、望美さん達の言うところの『鎌倉時代』から『平成』に、800年ほど時空を超えたではないですか」
「ああ、それは知っている…、え!? 弁慶…『かみよ』とは『神代』のことなのか?」
「言葉で言われても漢字は分かりませんが、君にしては珍しく、素速く状況を察してくれたようですね」
「ああ、今度は『平成』の世から、逆に過去の時代へ時空を超えたのだな」
「たぶん」
「で、以前、譲と来た『神代』だと判断したのだな」
「はい。本当にこういう緊急時は、君が聡明になってくれて話が早いですね」
「困ったな」
「はい?」
「番組収録の途中だったはずだが」
「ええ……、でもそれ以上に困ったのは、誰が、何の目的で、ここに僕達を呼んだか、ですね」
「そうか」
「油断しないでください」
「分かった」
「え? え? 何? 何?」
「ヒ、ヒノエ?」
「あ、敦盛? こ、ここ、どこだ?」
「さ、さあ……?」
「オレ達、夕飯の買い出しから帰って来て、マンションのエレベーターに乗ったはず…だよな?」
「あ、ああ。またヒノエがエレベーターのボタンを押し間違えたのではないのか?」
「おいおい、エレベーターのボタンを押し間違えたくらいで、
見ず知らずのこんな荒涼としたところに来るわけないじゃん」
「そうなのか?」
「これはちょっと……やばいかも。敦盛、オレの傍から離れるんじゃないぜ」
ヒノエは油断無く身構えて、何度か高らかに指笛を吹いた。
「元の世界? 『時空』とやらを戻ったのだろうか?」
「いや、違うね。こんな風景、見たことも聞いたこともない。それに」
「それに?」
「オレ達の時代なら……、今の合図で鴉が跳んで来るはずさ」
「指笛は、そういうことなのか」
「そういうこと。それに、何となくは、お前も感づいているのだろう?」
「ああ……確かにここは、私達の見知っている時代の空気では……ない」
「何があったかは分からないが、先ずは状況判断、かな。落ちつ」
「冷凍食品が解けてしまうのだが、どうしたものだろうか」
「敦盛……お前、落ちつきすぎ」
(……今度は、独りから始まるのか)
この時空に跳躍してきて、まず思ったのはそれだった。
時空跳躍……これは間違いなく時空跳躍だ。
有川譲には確信があった。
何と言っても、譲は時空跳躍のベテランなのだから。
平成から鎌倉へ……鎌倉から平成へ……、平成から神代へ……神代から平成へ
そして今回……、
譲は、うんざりした気分で辺りを見渡した。
(ここはどこだ? 今度はどの時代なんだ?)
なんだか腹立たしくさえ感じてきた。
(俺がいったい何をしたって言うんだ……)
以前は一緒に先輩が時空跳躍していた。……途中までは兄さんも。 だから先輩を探した。兄さんも探した。
前回は弁慶さんと一緒だった。跳躍後もはぐれずに。
しかし今回は、まるっきりの独り。
ただ、今回は部活動の最中だったから、その手には、
並寸よりやや大きめの、使い慣れた譲愛用の弓が握られている。
遙か昔、まだ譲が幼稚園に入るかどうかの頃、自宅の蔵から兄さんが見つけてきた弓。
那須与一のアドバイスに、自分なりの工夫を加えた弓であることが心強い。
5分程前まで下級生に指導していた時に持っていたグラス弓より、格段に手になじむ。
そして一瞬前に射ようとしたカーボン製の矢も一つ……
(で、ここはどこだ? 以前、時空を超えた時は宇治川の近くだったが……!!
どちらかというと、この空気は…風早さんに連れて来られた神代の時代に似ている。……まさか……また?)
何やら、口笛のような音が聞こえた。
少なくとも、あっちの方角に人がいる。
何の合図かも分からない。
油断無く身構え、いつでも矢を射られる体勢で、口笛の方に近付いていく。
(………)
これが自分の運命なのだろうか。
リズヴァーンは大きく息をして、空を見上げた。
(ここは…江ノ島の割磯、ではない…)
手にしていた7m近いのべ竿と、たった今獲ったばかりのクロダイを手に、油断無く、辺りの気配を呼んでいた。
愛刀のシャムシールは自宅に置いてきた。
磯釣りに戦道具を持ち歩く者など居ないのは当然だ。
しかし、リズヴァーンは
(……迂闊だった…私は、神子の世界に…甘え過ぎていたのだ)
と自らを、深く戒めた。
左太腿のホルダーに収まっている短剣だけが武器と呼べる。
(それでも、あるだけマシ…なのだろう)
その時、後ろに気配がした。
殺気は感じられなかった。
「異形の者達が現れたと聞いて跳んで来てみれば……お前は何者だ?」
「我が名は、リズヴァーン」
「リズヴァーン……。で、この常世の国に何の御用事かな?」
「常世……」
「返答が無いのは、答えられないのか? それとも……」
「我が名は答えた……」
「ほお、俺に名乗れと? この世界で俺を知らぬのか?
ハハハ、お前、余程のうつけか、それとも……」
「……」
「いいだろう。俺の名はアシュヴィン!」
「や、常世の第二皇子であらせられます!」
「リブ…、お前、付いてきたのか」
「ま、たまたま、です。たまたま」
「フ、ではそう言うことにしておいてやる」
「や、ありがとうございます。で、どうします?」
「こいつ…か?」
「ま、はい」
「気を付けろよ。こいつ、レバンタなぞより、よっぽど腕がたつ。
ではリズヴァーンとやら。もう一度問う。
この常世の国に何の用事かな?」
「……答えられない」
「ほお…それは、我が常世に対する敵対的態度と解釈して、差し支え無いのだな」
アシュヴィンは、笑みを絶やさず、ゆっくりと剣を抜いた。
「待って! アシュヴィーン!」
「待って!」
「お待ち下さい!」
「ほお、これはこれは。麗しの姫君がお三方も」
08/09/30 UP