アシュ千で話は進んでいきます
いざ 大運動会! in 常世
第4話 宣誓!
「〜という大運動会を、これから挙行しようというワケなんです」
「要は、遊び、なのだな。二の姫」
「まぁ、遊びと言えばそうですけど…」
「失礼する!!」
「忍人さん……待ってください!」
「下らない! 下らないでしょう!
そんな遊びのために、中つ国の教練が中断されるなど、あっていいはずがない!」
「何のための教練なんですか?」
「か、春日さん…」
「あなたは……?」
「春日望美です」
「ああ、有川と武蔵坊の神子という」
「はい」
「あなたも龍神の神子だというのならば、お分かりのはずだ!
国の防衛の為には、常日頃から」
「防衛、ですか……。で、何処と戦うんです?」
「何処……別に今、これといってどこの国が脅威と言うことは」
「だったら、ここで運動するのも、中つ国に帰って教練をするのも、
実質は変わらないんじゃないですか?」
「女子供の遊びなどに付き合ってはいられない、と言っているのです。
そのようなことは、どうぞ、そちらの方々となさっていて下さい。
我々まで巻き込むのは止めて頂きたい!」
「『そちら』って?」
「!? ……そちらはそちらです!」
「へぇ〜。そんなに、『女子供』に、遊びで負けるのが恐いんですか?」
「か、春日さん……」
「の、望美、そんな挑発を…」
「ゴメンね、千尋ちゃん、朔……。でも、私、頭ごなしに偉そうな物言いをする人って、好きじゃないの」
(そう言えば……)
朔は思い出していた
(あの宇治川で初めて望美と遇った時からそうだった…
『ちょっと待ってください! それなら、どうして朔を連れてきたの?』
知らなかったとは言え、源氏・征西軍総大将、源九郎義経殿を相手に…)
橋姫神社に布陣していた九郎の物言いに食ってかかった望美の姿は
遙か昔のようでもあり、つい昨日のようでもあり、
あの時とまったく変わらぬ望美の態度に、思わず笑ってしまった。
「ま、自分の国も守れずに、異世界の俺達にすがった軍隊ですからね。
あまりきついことを言っちゃ、可哀想ですよ、先輩」
譲も悪戯っぽく追随して笑った。
「ゆ、譲殿まで…」
「そっかぁ〜、そうだね。葛城将軍さん、無理言ってゴメンなさい」
「お、お前達! 中つ国を侮辱するのか!」
忍人は身構えた。
そんな忍人の様子に、布都彦と足往が慌てる。
「葛城将軍!」
「布都彦、下がっていろ!
有川! そこまで言うからには、覚悟は出来ているのだろうな」
「覚悟?」
「我が破魂刀を受けてから、今の侮蔑を悔いるがいい」
「忍人様! だ、だめです!!」
「足往! そこを除け!」
忍人が抜刀するより早く、何かがその忍人の手を叩く。
「痛!」
その手を叩いたのは長い竿であった。その竿を持った相手を、忍人は睨み
「お前、邪魔するのか!」
「無論」
「何!」
「我らは八葉。龍神の神子の楯であり、刃」
「つまりはお前が相手をする、と?」
「いや、剣を抜いてはならぬ、と言っている」
「何!?」
「友愛を持たぬ力に破邪は叶わぬ。慈愛を知らぬ心に覇気は宿らぬ」
「忍人、リズ先生の仰るとおりだ。刀から手を離しなさい」
「風早…」
「どうでもいけど、ちょっと大人げないんじゃ、ない」
「那岐……、お前まで」
「この運動会は中つ国の二の姫の願いでもあるんですよ」
「風早…、君は二の姫に甘すぎる」
「そう…ですかね?」
「将軍……」
「しかし……、分かった。仕方ない。 皆でそんな顔をして見つめられては、折れるしかないだろう」
「譲、譲…」
「何だ、ヒノエ?」
「あの偉そうな奴、本当にお前の言うように嫌な奴なのかい?」
「いや…、真面目すぎるだけだろ。軍人としては超が付く程の一流さ。……強いよ。
しかも、あの破魂刀っていう二振りの刀で、自分の魂を削ってまで攻撃するって話だし。
まあ、実際には見たこと無いけど…」
「危ない攻撃する奴なんだね」
「まぁね」
「声はお前に似てるのに」
「もう慣れたけど、あちこちで言われたよ」
「やっぱりね」
「でも、まさか本当に刀を抜きそうになるとは思わなかった」
「譲らしくない挑発だったと思う」
「九郎さん? ……そうかな?」
「分かってないところが、尚更、笑えないじゃん」
「できたら、一手、手合わせしてみたいものだ」
「破魂刀とですか?」
「ああ、興味がある」
「景時、もう大丈夫でしょう」
「ホッ…、どうなるかと思ったね〜」
「兄上? どうされたのです?」
「朔殿、景時は、万一葛城将軍が誰かに斬りかかった場合に備えて
遁甲と幻影をいつでもかけられるように、構えていたのですよ」
「兄上……」
「いや〜〜、二つ同時にって弁慶に言われた時はどうしようって思っちゃったよ〜
最近、鈍っちゃってるからね〜〜」
「ハハハ、望美。お前の八葉とかいう連中は、存外おもしろいな」
「そうですか?」
「忍人の破魂刀を前にして、まったく恐れることがないとはな」
「知らないからですよ」
「それは、こちらも同じ、だな」
「フフフ、どうでしょうね」
「さ、千尋。始めるなら、忍人の気が変わらない今のうちに始めることだ」
「はい。じゃ、望美さん」
「うん」
「選手宣誓! 我々、選手一同は」
「選手宣誓! 我々ぇ選手一同はぁ」
神子達を取り巻いていた両八葉、更にその他の人々も、この神子達の声に注目した。
「スポーツマンシップにのっとり、正々堂々と、戦うことを、誓います!」
「スポーツマンシップにのっとりぃ正々堂々とぉ戦い抜くことを誓います!」
「最後のところが微妙に違ったぞ」
「さすが望美だ」
「どういうことですか、九郎?」
「いやだな弁慶。『戦う』のと『戦い抜く』のとじゃぁ、随分違うんじゃん」
「そう、『戦い抜く』んだ。分かった!!」
「あ〜あ、九郎のやる気に、火がついちゃったね」
「な、何事もなく…、無事に終わってくれればよいのだが」
「おいおい敦盛。何て不安なことを言い出すんだい?」
「確か、向こうの神子は『戦い抜く』と言ったな」
「はい、葛城将軍」
「そうか『戦い抜く』のか。ならば、教練としても十分役に立ちそうだ」
「はい」
「そして…『戦い抜く』のだからな。あいつらに目にモノを見せてやる!」
「あ〜あ、忍人にも変なふうに火がついたみたいだ。
有川…、君、責任とってよ。僕はゴメンだからね。
あ〜あ……、面倒なことになりそう」
08/10/07 UP